来年度報酬改定で遠隔診療への評価決定 未来投資会議で首相明言

 

(出典)首相官邸ホームページ「総理の一日」より http://www.kantei.go.jp

2017年4月14日、第7回未来投資会議が首相官邸で開催された。今回のテーマは「新たな医療・介護・予防システムの構築に向けて」と設定され、第2回(既報)で大枠の方向性が示された医療と介護の改革内容について、部会等で進められてきた内容を踏まえた総括が行なわれた。

 

医療では遠隔診療の診療報酬評価が事実上決定

会合では、東京都、宮城県で在宅診療を行う医療法人社団鉄祐会の武藤真祐理事長が、ICTの活用による在宅医療進展の観点から、遠隔医療普及の環境整備の必要性について説明。専門部会の議論をリードする翁百合部会長(日本総研副理事長)、高橋泰副会長(国際医療福祉大学教授)、厚労省からもかかりつけ医による効率的な医療の実現のため、ICTを活用した遠隔モニタリング、指導の必要性が指摘された。これをうけ安倍首相は以下のように発言し、来年度の診療報酬における評価を明言した。

 

“病気になった時、重症化を防ぎ回復を早めるため、かかりつけ医による継続的な経過観察が大切であります。対面診療とオンラインでの遠隔診療を組み合わせれば、これを無理なく効果的に受けられるようになります。こうした新しい医療を次の診療報酬改定でしっかり評価いたします。”

 

横倉日本医師会会長も「大いにやるべし」

会合後に行なわれたブリーフィングでは、石原伸晃経済再生担当大臣も説明に立った。この日の議論に関して、同じく出席していた横倉義武日本医師会会長からも、ICTの活用について「大いにやるべし」との発言があったという。未来投資会議の動向を受け、診療報酬改定を審議する中医協(中央社会保険医療協議会)では先日からICT活用の評価についての議論を始めているが、保険者委員が前向きな姿勢を見せているのに対し、診療側の日本医師会の委員は慎重な発言を繰り返している。こうした中の会長の発言は、今後の中医協での動向を占う上で注目されそうだ。

その他の論点では、医療介護の質の向上に向けた「ビッグデータの活用」「AIの開発強化」「ロボットの導入推進」等の施策の方向が改めて示された。特に塩崎恭久厚生労働大臣は、介護ロボットの導入促進について具体的に踏み込み、現在実証実験中の事業の検討結果を踏まえ、来年度での介護報酬等での評価について発言。安倍首相も以下のように受けた。

 

老化は避けられませんが、日々の努力で介護状態になることを予防できます。いったん介護が必要になっても、本人が望む限りリハビリを行うことで改善できます。そうした先進的な取組も見てきました。大量のデータを分析して、どのような状態に対してどのような支援をすれば自立につながるのか明らかにします。そして、効果のある自立支援の取組が報酬上評価される仕組みを確立させます。介護現場は深刻な人材不足で苦しんでいます。介護者の負担を軽減するロボットやセンサーの導入を、介護報酬や人員配置基準などの制度で後押ししてまいります。

 

遠隔医療についての発言のように来年度での評価を明確に表明しなかったものの、厚労省の施策についてほぼそのまま追認していることから、厚労相が提示した来年度の報酬改定における評価はほぼ確実とみられる。

Med IT Techではこれまでも未来投資会議における医療介護の改革議論について追ってきたが、今月に入り規制改革推進会議でも、規制緩和の観点から医療介護分野での議論が始まっていることを確認している。診療報酬以外の制度設計については、そちらでより具体的な議論が進んでいる。別記事でその詳細について報告する予定。