MRI画像から神経膠腫疑いの領域を抽出するAIを開発 富士フイルムと国がん
富士フイルムと国立がん研究センターが、MRI画像から神経膠腫(グリオーマ)の疑いのある領域を抽出するAIを共同で開発したと発表した。希少がんである神経膠腫の治療前の画像評価の精度向上が期待できるとしている。
神経膠腫の事前評価への活用に期待
悪性脳腫瘍の一つである神経膠腫は希少がんの一つであると同時に、原発性悪性脳腫瘍の中では最も多い、臨床的に重要な腫瘍とされる。神経膠腫が大きくなると脳の機能が影響を受け、頭痛、吐き気、運動機能や言語機能の障害など、さまざまな症状が起こる。現在、神経膠腫の治療では、治療前に実施するMRI検査にて画像を評価した後、手足の動きや言語などの機能を温存しつつ手術で腫瘍を最大限摘出し、放射線治療や化学療法を行うことが一般的となっている。患者数が少なく臨床データの数が限られている神経膠腫に特化したAI技術は存在せず、神経膠腫の領域や大きさを精確に把握することが難しいという課題が存在している。
今回、富士フイルムと国立がん研究センター研究所 医療AI研究開発分野の小林 和馬 研究員および浜本 隆二 分野長、同中央病院・脳脊髄腫瘍科の高橋 雅道 医長、同中央病院・放射線診断科の三宅 基隆 医長らを中心としたチームは、MRI画像から神経膠腫の疑いのある領域を抽出するAI技術を開発した。富士フイルムの「SYNAPSE Creative Space」により、頭部MRI画像から神経膠腫の領域を抽出するアノテーション作業を効率的に行い作成したデータをAIに学習させ開発したものという。MRI画像から神経膠腫の疑いのある領域を抽出し、その領域の体積を計測できる。
研究チームでは本技術により神経膠腫の治療前の画像評価をより高い精度で行えることで、将来的に、早期発見や診断の精度向上、放射線治療や手術などの治療計画の最適化などに役立つことが期待できるとしている。