ゲノム解析で小細胞肺がんの分類に成功、分類した一部グループで免疫チェックポイント阻害薬の有効性確認

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 国立がん研究センターが、ゲノム解析で小細胞肺がんを五つのサブグループに分類し、治療効果の予測に成功した研究成果を発表した。すべての症例を分類できたわけではないが、分類した一部のグループで免疫チェックポイント阻害薬が有意に有効であることも分かったという。

「LC-SCRUM-Asia」を活用

 発表された論文によると、国内 154 施設が参加する肺がん遺伝子スクリーニング基盤「LC-SCRUM-Asia」のデータベースを用い、肺がんの中でも特に予後の悪い小細胞肺がんの 1035 例を対象とした研究を行った。結果、1035 例中 944 例において遺伝子解析に成功し、遺伝子の変化によって以下の5つのサブグループ(グループ A~E)に分類することができたという。

 さらに、これら五つのグループの特徴や治療の効果を検討したところ、グループ A(NSCLC-subgroup)またはグループ B(MYC-subgroup)に属する小細胞肺がんは、それ以外の小細胞肺がんと比較し、従来のプラチナ製剤を併用した化学療法における無増悪生存期間(PFS)が短く、治療の効果が乏しいことが分かった。

 また3%の患者において、様々ながんで一般的に高頻度に認められ、かつ治療標的となりうる遺伝子変異が確認できた。(グループ C)。そして 7.4%の患者においては、PI3K/AKT/mTOR 経路の遺伝子変異が認められた(グループ D)。これら 2 つのサブグループでは、遺伝子の変異に基づいて新たな治療薬が開発できる可能性があるとしている。

分類できた一部グループでPD-1/PD-L1 阻害薬の有効性を確認

 ヒストン修飾酵素の遺伝子変異は、小細胞肺がんで比較的高頻度に認められることがこれまでにも報告されている。今回、ヒストン修飾酵素の遺伝子変異に関しては、632 名で評価が可能だった。ヒストン修飾酵素に遺伝子変異を有する小細胞肺がんは17.6%であり、これらをグループ E(HMEsubgroup)と定義し解析した。

 解析の結果、代表的な免疫チェックポイント阻害薬として広く用いられている PD-1/PD-L1 阻害薬を使用した患者130 名の中で、グループ E に属する患者は、そうでない患者と比較して生存期間が有意に長いことが確認された。このことはグループ E の患者において、免疫チェックポイント阻害剤が有用となる可能性を示すとしている。 

 これらの結果から、小細胞肺がんの遺伝子の変化に基づいた分類が、治療結果の予測と治療選択において効果的な指針となる可能性があることが示されたとしている。ただ今回の研究では小細胞肺がんの約半数が、5つのサブグループのいずれにも分類することができなかった。これら「分類不能」群に関しては、遺伝子の変化以外にも、タンパク質や RNA といった様々な分子の情報を包括的に解析する技術(マルチオミックス)を用いた、より精緻な分類が期待されるとも述べている。

論文リンク:Clinical significance of a prospective large genomic screening for small-cell lung cancer: the genetic classification and a biomarker driven phase II trial of gedatolisib(Journal of Thoracic Oncology)

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Posted by medit-tech-admin