3Dプリント出力可能、従来より強度の高い骨生成へ導く脊椎ケージ開発 大阪大ら
脊椎疾患により不安定化した椎間の安定性と強度を回復させる「脊椎ケージ」を革新する、新たな研究成果が発表された。3Dプリント技術で、スピーディな骨形成と高強度化を誘導できるハニカム構造の脊椎ケージを生成し検証したところ、従来手法より3倍もの高強度化が達成できたという。
研究成果を発表したのは、大阪大学大学院工学研究科の中野貴由教授、北海道医療センターの伊東学統括診療部長、帝人ナカシマメディカルらの共同研究グループ。脊椎ケージは不安定化した椎間を機能的に連結癒合し、本来の力学的安定性を取り戻すためのデバイスで、脊椎疾患治療の一環として活用される。研究グループでは材料工学の視点から、質の高い骨を誘導するには一方向の「孔」と孔壁表面での微細「溝」構造という階層的異方性構造を有するハニカムツリー構造が役立つと考え、3Dプリンティング技術でこの構造を持つ脊椎ケージを作成、その機能を細胞実験とヒツジ脊椎への埋入試験による動物実験によって評価した。
細胞実験では、溝を付与した基板上で骨芽細胞が配列化していることが実証された(図1)。またヒツジに埋入したケージを8週間後に取り出して引き抜き、試験によりケージと骨の結合強度を測定すると、新設計のケージは比較用の従来型ケージ(中空構造の内部に自家骨を充填したもの)の3倍以上の強度を有していることが分かった(図2左)。ケージの中に誘導された骨組織は、正常な骨と類似した頭尾軸方向への強い骨配向性を有しており(図2右)、これが高強度の要因であることが示された。
研究グループでは、新たなコンセプトの正当性、さらには、それを達成するためのハニカムツリー構造の機能性が証明されたとしており、ケージ/骨界面強度の迅速かつ著しい上昇は、脊椎疾患の早期治癒だけでなく、しばしば問題となるケージの脱転や沈み込みを改善し、患者の身体的・精神的・金銭的負担を軽減し早期の退院・社会復帰(QOL向上)を促すことができ、医療費の低減にも寄与できるとしている。