2017年3月28日、日本医療政策機構は2006年から続けている定例調査の最新の報告として、2016 年11 月から12 月にかけて、医療における情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)に関する意識調査を実施し、報告書をまとめた。報告書は機構のWebサイトから閲覧できる。
遠隔診療への期待理由は「通院の手間」
年収400万以下世帯の治療中段理由は「費用負担」
本調査では、全国 20 歳以上の男女 1,191 人を対象とし2016 年 11 月から 12 月にかけて、インター ネットによる調査を実施。具体的には「遠隔診療」「医療データの共有」「人工知能の医療への応用」に意識を調査したという。
まず遠隔診療についてどのような疾患なら遠隔診療を受けてみたいか聞いたところ、生活習慣病などの慢性疾患の未治療群の回答者は、予防及び症状が安定している慢性疾患の治療において、過半数が遠隔診療を活用したいと回答した。この未治療群に限らず、遠隔診療に前向きな理由として「通院の手間(が省ける)」を挙げた人は、どの地域でも5割を越えた。
次に生活習慣病の治療を中断した群にその理由を聞いたところ、最大の理由は 「通院の手間」であったが、「費用負担」を挙げる人が3番目に多かった。特に世帯年収が400万を下回る群では、費用負担を挙げる人が34%にのぼり最大原因となっていた。
人工知能の臨床応用は「精度」次第、医師のサポート役として期待
人工知能の医療への応用に関しては、人工知能の精度が医師と同程度ならば、35%が人工知能を診断に活用して欲しいとした。ただ人工知能の精度の方が人間より優れていると仮定した場合では、その割合は60%となった。また人工知能が医師の補助として診断に活用されることに51%が前向きだったが、人工知能が主に診断をするとした場合は29%と下がった。人工知能に精度を求める一方で、あくまで人間の医師に診断をしてもらいたいという傾向が読みとれる。
今回の調査をまとめた日本医療政策機構は、福島第一原発の国会事故調査委員長も務めた黒川清氏(MIT、コロンビア大学客員教授、世界認知症委員会委員など)が代表理事となる独立系のシンクタンク。理事には宮田俊男氏(みいクリニック院長、大阪大学特任教授、京都大学客員教授、国立がん研究センター政策室長)や武藤真祐氏(医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック院長)といった医療におけるイノベーションの旗手が名を連ねている。