2016年11月29日、国立研究開発法人 国立がん研究センター、株式会社Preferred Networks、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能研究センターは共同で記者会見し、AI(人工知能)を活用した総合的ながん医療システムの開発プロジェクトを開始すると発表した。
このプロジェクトは、国立研究開発法人 科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)における「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」研究領域に採択され、CRESTが設定する5年間の研究期間で実用化を目指すという。
診断補助にとどまらない「統合的」システムとは
リリースで発表された概念図から今回の研究の特徴を考察してみると、以下のようにまとめられる。
○国立がん研究センターの複数の研究成果を教師データとして投入
国立がん研究センターが培ってきた成果を複合的に投入すると発表している。例えば保持している膨大な臨床データ、マルチオミックスと呼ばれるゲノム、エピゲノム、画像情報と血液などの網羅的な生体分子情報、疫学データ、文献情報などを投入するとしている。これまでの例よりも幅広いデータを投入することで、いま国内で研究が進みつつある診断支援にとどまらない、様々な場面での支援を想定している。
○国内のAI研究大手が同時に構築へ取り組む
これらの情報資源を解析する担い手として、強みの違う2つの研究機関が同時に取り組むことも注目すべき点だ。ディープラーニングを導入し次々と成果を上げているPreferred Networksは、このプロジェクトではその手法を活用し診断支援目的のAIを構築することが求められている。機械学習と統計に実績がある産総研は、生体情報の解析を通じ、新たなバイオマーカーの探索・発見を担当することになりそうだ。
これらの体制で創薬・診断・治療を統合的に支援できるシステムを目指していくというのが、今回発表されたプロジェクトの新規性であり独自性といえる。5年間の前半は、膨大なデータを解析可能なデータベースにするステップと、その後それを解析するステップにあてるという。すぐに大きな成果が出るわけではないが、AIも含めて国産のシステムが医療分野で構築できれば大きなパラダイムシフトであり期待したいところだ。