おむつに組み込める電源不要のワイヤレスセンサーを開発 介護負担軽減へ向け実用化加速へ

 東京理科大と筑波大の研究グループが、紙を基材とし、かつ尿糖から自己発電可能なバイオ燃料電池を開発し、さらにこの燃料電池を活用したバイオセンサーへの応用に成功したと発表した。おむつに組み込むことが可能だとしており、実用化できれば介護負担の軽減に貢献できるとしている。

尿糖濃度に応じ信号密度が変化、糖尿病の早期発見にも期待

 研究成果を発表したのは東京理科大学理工学部先端化学科の四反田功准教授、板垣昌幸教授、同大学大学院理工学研究科先端化学専攻の藤村優輝氏(2019年度博士前期課程修了)、筑波大学数理物質系物質工学域の辻村清也准教授らの研究グループ。研究グループでは、尿糖が血糖値と密接に関係していること、尿糖の検出は血液検査より手間が掛からないこと、食後高血糖などの一時的な血糖値の変化も追跡できることなどに着目し、尿糖を検出する自己発電型バイオセンサの開発を目指した。

 具体的には、まず自己発電を実現するため、バイオ燃料電池の開発に着手。研究グループでは過去に、酸化マグネシウム(MgO)微粒子を鋳型としたメソ多孔性炭素(MgOC)や、この表面を高分子鎖で修飾したメソ多孔性炭素(GMgOC)を有する酵素電極の作成、およびこれらを使用した汗中の乳酸から自己発電するバイオ燃料電池、乳酸量をモニタリングするバイオセンサを作製することに成功しており、この成果を応用した。撥水性を有する紙上に導電性のカーボン層、MgOC層またはGMgOC層の順にスクリーン印刷により積層させ、糖濃度の違う溶液に浸すなど実験を繰り返した結果、糖濃度の増加に伴い、信号の出力密度も増加する線形相関があることを確認した。

 さらに、このバイオ燃料電池を活用した尿糖センシング・デバイスの設計、作製、評価も行った。Bluetoothで無線発信ができるこのデバイスは、糖を検出するとバイオ燃料電池が発電、無線発信機で蓄電および信号を発信する。信号を受信するスマートフォンなどの外部機器ではその周波数を確認でき、その周波数を糖濃度へ簡易的に換算可能となる。研究チームは実際に各糖濃度の溶液を反応させて、発信された電波の周波数から糖濃度を決定できることを実証した。

 研究グループの四反田准教授は「今回開発したデバイスが介護福祉現場に応用されると、要介護者のおむつの適切なサイズや交換時期がわかるだけではなく、介護者が負荷なく、遠隔でヘルスケアモニタリングができる」としており、おむつに組み込むなどのユースケースを想定するほか、尿糖濃度が測定できる特性を活かし、糖尿病の早期発見などにも応用が期待できるとしている。