オンライン診療で診察後、脳深部刺激プログラムを「処方」 日本初のアプリ提供開始

 アボットメディカルジャパン(東京都)は、脳深部刺激療法(DBS)の遠隔診療を可能とする日本初のスマートフォンアプリの提供を開始した。アプリはiOS向けで、患者向けアプリと医師向けアプリが用意されている。パーキンソン病等の運動障害に苦しむ患者の通院負担を低減できるソリューションとして期待される。

 パーキンソン病はまず薬物療法が第一選択となるが、薬物耐性が課題で進行すると振戦があらわれ、日常生活に支障をきたすようになる。その後の症状コントロールには、脳深部刺激療法(DBS)※1が選択されるが、DBSの治療が行える認定医は脳神経外科医の約3%といわれており※2限定的で、症状があるなかで、患者は遠方から通院せざるを得ないケースも多い。

 今回同社が提供を開始したアプリ「NeuroSphere VC」には、専門医のオンライン診療が受けられるビデオ通話機能と、治療のための電気刺激プログラムをダウンロードする機能が備えられている。患者はこのアプリでオンライン診療を受けたあと、受信したスマートフォン内の電気刺激プログラムを使ってBluetooth経由で体内に植込まれている刺激装置と通信させ、パーキンソン病症状をコントロールすることができる。また、これまで対面診療で行われてきた機器チェックも遠隔で行うことが可能だという。通信トラブルが起きた際のリカバリプログラムも内蔵している。

 国立病院機構 仙台西多賀病院 脳神経外科医長の永松謙一医師は、このアプリについて「現在、DBS治療を提供できる医療機関は限られており、術後の通院等が障壁となり治療を断念する患者も少なくない。遠隔診療でのDBS治療プログラムの調整が可能となることで、患者のみならず家族や介助者の負担が軽減され、生活の質の向上が期待できる」とコメントしている。

※1 脳深部刺激療法(DBS)
脳深部刺激療法(DBS)は、脳深部に電気刺激を行うことで、薬物治療で十分な改善が得られない本態性振戦、パーキンソン病、もしくはジストニア症状を緩和します。病態が進行するパーキンソン病では、発症後徐々に経口薬の効果が下がり、最終的には振戦症状が止まらないジスキネジアになります。DBSは、ジスキネジアに対する特定の症状への効果が認められています。患者さんは前胸部の皮下に神経刺激装置を植込み、脳深部に繋がったリードから電気刺激を流すことで、身体の振戦症状を改善することができます。アボットの遠隔診療に対応したDBSのコントローラとして、専用機器が不要であり、iPhone等で電気刺激を調整することができます。

※2 DBSの治療が行える認定医は脳神経外科医の約3%
一般社団法人日本脳神経外科学会が公開する脳神経外科専門医(7,927名、令和4年9月現在)の中で、全国のDBS認定医(230名、令和4年9月現在)の割合