ヘルスケア分野でのAIソリューションを展開するベンチャー、シンプレクスクオンタム(東京都)が東京大学医学部附属病院と共同で、一部の心電情報のみから心不全の重症度を高精度に判定できるAIを開発したと発表した。共同で特許を取得し、このAIを用いた遠隔医療の治療効果を研究する課題がAMED(日本医療研究開発機構)にも採択されている。
「I誘導」心電情報のみから重症度を検出
2014年設立の同社は、デバイスの回路設計から、そのデバイスで収集したデータのAIによる解析まで手掛けられるのが強み。特に体動データと心電データの取得・解析に実績があり、前者では山口県立大学との共同研究を経て、介護施設におけるベッドの見守りとポジショニング支援を行うことが可能なセンシングデバイス「SQ-bed」、後者では携帯型心電計測デバイス「心電くん」と「心電くん」を利用した遠隔健康医療相談サービスを発表・展開している(既報)。
同社はその「心電くん」を活用したさらなる研究として、2020年1月より東京大学医学部附属病院と共同で、心不全を検出することを可能にするAIの開発に取り組んできた。今回、I誘導の心電図から心不全を定量的に判定し、心不全の重症度を97%以上の正確性で判定できるアルゴリズムの開発に成功したという(特許取得済)。このAIを核として、複数の心電図装置にも対応できるクラウドを活用した心不全検出や受診勧奨システムが構築できるとしている。また同じく同社が開発した心電図による個人識別機能を活用すれば、家庭内で同一患者から取得されたデータであるか確定させるアルゴリズムを構築することも可能だという。
またこのAIをを用いた研究課題「遠隔医療における心不全早期検出システムの実現」が、東京大学医学部附属病院循環器内科の藤生 克仁特任准教授(先進循環器病学)を研究責任者として、AMED(日本医療研究開発機構)の「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業(基盤技術開発プロジェクト)」に採択された。