ADHDとASDの併発有無を光トポグラフィー自動解析AIで支援、早期診断に道

日立製作所、自治医科大、国際医療福祉大、中央大は、神経発達症である注意欠如・多動症(ADHD)患者が自閉スペクトラム(ASD)を併発しているかどうかの早期診断を支援する基礎技術を開発した。ADHD患者が初めて治療薬を服薬した時の脳反応を光トポグラフィーで計測し、 ASD併発の有無を自動解析するもので、約82%の正確度だとしている。

2時間程度で併発有無を診断できる可能性

ADHDやASDは長期間続くと不登校やひきこもりのほか、うつ病などにつながるともいわれる。近年、ADHDとASDの両方の特徴を持つ患者が少なくないことが報告され、併発の有無を診断することも必要になっている。

しかしこれを見極めるには数ヶ月にわたる経過観察が必要で、治療法や療育法の決定に時間がかかり、患者や家族の負担になっていた。この課題解決のため、2018年3月、自治医科大学を中心とした研究により、服薬経験がないADHD患者の治療薬服用前後の脳活動パターンを用い、ASD併発の有無による病態の違いを可視化できることが明らかになった。今回、この知見をもとに、ADHD患者がASDを併発しているかを自動的に解析するアルゴリズムを開発した。

 

アルゴリズム開発にあたってはまず、治療薬の服薬経験のないADHD患者32名(同意を得たASD併発患者11名、非併発患者21名)に対し、塩酸メチルフェニデート徐放剤の服用1.5時間後に、簡単な課題(特定の絵が出た時だけボタンを押す)を実施し、脳反応の光トポグラフィー信号を10分程度計測した。
そして計測した信号と数カ月後の診断結果を機械学習した結果、脳の注意関連領域(中前頭回-角回)と運動関連領域(中心前回)の活動量を用いることが、ASD併発の有無を見分けるために最適であることが分かった。上記2種類の関連領域の活動量を2次元的にプロットし、それぞれROC曲線によって決められた適切な閾値を設けることで、最も正確に分類できることが明らかになったという。
この技術の効果を確認するために、クロスバリデーションの手法を用い、数カ月後の診断結果に対する予測正確度を検証したところ約82%となり、診断支援技術として実用化できる可能性が示された。

 

研究チームは「これまでご家族などへの問診から医師が数ヶ月かけていた診断が、客観的な指標を診断に加えることで、早期に治療・療育方針を決定し、ご家族の患者に対する接し方にもアドバイスできることが期待される」としている。