厚生労働省設置の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」は2017年6月27日、非公開で開催されてきた4回の討議内容をまとめ報告書を公表した。AIの開発で今後優先的に取り組むべき重要6領域を選定し、それぞれの工程表も公開している。
「AI開発エコシステム」の必要性を訴え
データ標準化にインセンティブ設定も提言
報告書では本邦におけるAI開発のこれまでを振り返り、保健医療分野では患者・国民の得るメリットは大きいと改めて意義を確認。現在の技術で強みを発揮できるところ、または課題解決のために取り組むべき6分野「ゲノム医療」「画像診断支援」「診療・治療支援」「医薬品開発」「介護・認知症」「手術支援」を選定した。この中にはすでに開発が大きく進んでいる分野もあるが、ほとんど進んでいない分野も選ばれており、特に「介護・認知症」は施策を占う意味でも重要な発表だ。
報告書では国産のAI開発の重要性を強く訴えている。国民皆保険制度で生まれた膨大な保健医療データは「宝の山とも言うべき」「日本全体にとっての共有財産」であるとし、これらを有効活用し価値創造する「保健医療AI開発エコシステム」を国内で早急に実現しなければ、「日本は海外で開発されたAIをただ輸入す るだけの国になってしまうおそれもある」と危機感を表明した。そのために昨年発表された「保健医療分野におけるICT 活用推進懇談会」の提言にある「つくる」「つなげる」「ひらく」の理念を関係者で共有しながら、促進する施策が必要だとした。具体的には、データクレンジングのための規格化と、規格採用に対するインセンティブの設定や、低コストでデジタルデータ化を図れる自然言語処理技術の活用、次世代医療基盤法(既報)で想定されている情報利活用基盤の維持管理のためのコストの受益者負担などを挙げている。
ロードマップも公表 施策展開の指針に
報告書にはこの6分野の開発ロードマップも参考ながら掲載された。どの分野でも、遅くとも2021年にはAIの開発が完了、または着手とされている。なおこの懇談会は、組織としては厚労省内に今年設置された「データヘルス改革推進本部」(既報)の下に設置されており、推進本部で想定しているロードマップとも符号するタイムスケジュールとなっている。今後、報告書に基づいた施策が推進本部内で検討され、実施される見通しだ。