救急ビッグデータを活用した救急搬送最適化、全国3カ所で実証実験開始

2018年11月26日、消防庁消防大学校消防研究センターらは、かねてより進めている救急搬送データなどのリアルタイムな救急需要予測を行うシステムの実証実験を、12月より全国3カ所の自治体消防局の協力で開始すると発表した。

救急需要、地理空間情報、気象情報など分析

近年、救急車による傷病者の搬送に関する所要時間は、一部地域を除き、現場到着所要時間が6.0分から8.5分、病院収容所要時間は24.4分から39.3分へ延伸しており(いずれも1996年から2016年の20年間の全国平均)、社会的な課題となっている。この状況を改善するため、消防研究センターでは、ビッグデータ、G空間情報等を活用した救急車の最適運用システムの研究開発を行ってきた。

2018年2月からは、NTT、NTTデータとの3者で、救急需要と気象条件など関連情報との関係性を分析し、これを踏まえたリアルタイムな救急需要予測と救急隊の再配置等で救急車の運用最適化を図り、搬送時間の短縮を目指す共同研究を行っている。これまでの研究を通じたシミュレーションで効果を確認できたため、実証実験を行い実装の可能性を検証するという。

 

3つのテーマで実証実験、各自治体で検証へ

消防研究センターは、2018年12月以降、実施自治体消防局の協力を得ながら上記3テーマについてそれぞれ実証する。「最適配置」については名古屋市消防局の協力で、傷病者発生確率の高い場所への救急隊の最適配置を検討し、運用効率化の可能性を検証する。「受入可能性予測」については仙台消防局と、過去の事例をもとにランキング学習を用いて開発した、受入先候補提示AIの検証を行い、搬送先決定に要する時間短縮を目指す。藤沢市消防局とは、搬送時の安全性確保を目指し、NTTが別の研究で取得している藤沢市地域の道路段差データを活用し、救急隊に走行ルートおよびその道路状態の案内を行う。

各テーマの実証実験は、名古屋市では今年12月、他自治体では来年度以降の開始を目指す。