2023年2月から、仙台医師会が中心となり、NTTグループやオムロンヘルスヘルスケアが参画する新しいオンライン診療の実証実験が始まった。軽トラックを改造して家庭用の医療機器などを積み込んだ専用の車両を開発し、看護師が車両に同乗して患家まで訪問するかたちとなる。実証実験後、今年秋にも実用化を目指したいとしている。 オンライン診療の「弱点」を補完する「診療カー」を新たに開発 今月から、仙台市医師会を中心としたグループが新しいオンライン診療のかたちを目指した実証実験を始めている。オンライン診療自体はすでに実用化され保険適用されているが、コロナ禍対応をきっかけに初診からの適用も可能となったものの、対面診療を行うことを前提にした頻度の制限など、さらなる普及に向けては課題も多い。2020年度に仙台市医師会、仙台市薬剤師会と仙台市は共同でオンライン診療の実証実験(DtoP型)を行なったが、その結果として以下の評価を行なっている。 ● 初診や急性疾患への適用には課題はあるが、慢性疾患等には有効 ● 対面診療と比べて質的な差があることから、聴診音の情報など機器の開発・導入が必要 ● 通院の負担軽減、郊外地域での高齢者、高齢者施設、在宅医療での活用可能性 これらを踏まえ、仙台市医師会と仙台市は、課題を克服する新たなチームで実証実験のスキームを組み直した。具体的には、前回の実証実験で課題となった対面診療との「質の差」を縮めるため、NTTグループやオムロンヘルスケアなどに参画してもらい、各社の計測機器を使って患者の生体データを測定し遠隔でデータ送信することとした。さらにそうした機器を搭載し、サポート役として看護師が同乗して患家(または指定した地点)でオンライン診療を実施できる「診療カー」を開発。つまり、前回と違い設備を充実させ、さらに看護師を入れ、いわゆる「D to P witn N」のかたちでオンライン診療を行うスキームが、医療資源の乏しい地域では最適なのではないかという仮説の検証だ。 実証実験に参画する各団体とその役割 22日には仙台市内で実証実験の様子が報道陣に公開された。仙台市太白区の名取川下流にある四郎丸地区のクリニックがオンライン診療を担当し、「診療カー」が上流の約30km離れた秋保総合支所に向かい、患者役の男性が診療カーの中で診療を受けるというモデルを説明するための会で、実際の診療の様子を公開するものではなかったが、厚生労働省の専門部会で検討されている今春以降の巡回医療の要件緩和を見据えたものだ(既報)。公開実験では各機器による測定、データ送信も問題なく完了し運用可能なことが確認された。仙台市医師会や参画した各社では、実証実験を今年度末まで継続的に行い、その後課題の検証を経て秋には実用化したいとしている。