Appleが毎年開催している開発者会議(WorldWide Developer Conference)は、IT関連のメディアやアプリ開発者が注目する恒例のイベントだが、今年はAppleWatchやiOSでのヘルスケア関連の機能強化が多くみられた。Med IT Techではそれらに絞り、Appleの発表を振り返る。
AppleWatchに「月経周期」「騒音チェック」の確認機能
WatchOSとiOS両方の新規アプリとして「Cycle Tracking」が発表された。これは自らの月経日などを記録していくと、次の月経周期を予測してくれるアプリ。iOSでも入力でき、従来より提供されている「ヘルスケア」アプリでも確認できる。
周囲の環境音を測定する「Noise」アプリも披露された。基本的には常に環境音を測定しており、90デシベルを越えると聴覚障害を引き起こすおそれがある、としてすぐに警告を出してくれる。
これらの機能追加により、AppleWatchとiPhoneはこれまでも測定・データ収集可能としているバイタル、歩数、運動量、睡眠データ、のほかに、さらにパーソナルな情報を集めることになった。「ヘルスケア」アプリでは、蓄積されたデータを解析し簡単なアドバイスを行う機能も強化されている。
機微情報を扱うにふさわしいポリシーを提示するApple
Appleは以前より機微情報を扱うアプリ、開発キットを複数出しており、こうした情報を扱うためのセキュリティ構築にこだわっている。今回のWWDCでも、このセッションの最後に「あなたのデータは、あなた自身がコントロールできる」と強調していた。
この姿勢を端的に示すのが、今回発表された「Sign in with Apple」と言える。
「Sign in with Apple」は、サードパーティ製アプリがGoogleアカウントによるログインなど、他社アカウントによるログイン機能を実装していた場合、同様にApple IDでのログイン機能も提供するよう求めたものだ。このように求めている理由は、単なる自社サービスの普及策ではなく、「Sign in with Apple」がその他社サービスのログイン機能よりも安全だと考えているからだ。
「Sign in with Apple」が実装されたアプリでは、Face ID、Touch IDと連携してパスワードを入れることなくログインができる。また、メールアドレスを入力する必要があるアプリの場合でも、自らのメールアドレスを入力するか、Appleが自動で生成するプライバシー保護用のダミーアドレスを使用するかを選択することができる。このようにAppleは、顧客の外部への情報提供に関し、積極的な同意が得られなければ排除できる機能の設計に相当に注力しているといえるだろう。その理由は、自らのデバイスが機微情報を扱うにふさわしい堅牢なセキュリティを持つことをアピールするために他ならない。「安心してデータを預けられる」と信頼されるプラットフォーマーとしての道を、今後も追求していくと考えられる。
今回Appleが発表したiOS13は、開発者向けのベータ版がすでに配付中で、9月ごろに正式リリースとなる見込み。