AIで高精度に臓器セグメンテーション、放射線治療計画支援 医療機器として国内2件目の薬事承認
大阪大学の研究者を中心とするグループが、AIで臓器セグメンテーションを行うことで放射線治療計画を支援できるソフトウェアを開発した。熟練者に頼らず高精度に臓器を区分できるという。このソフトウェアは国内2例目の医療機器「放射線治療計画支援装置」として薬事承認されている。
約1,500例の臨床データを教師データとして開発
大阪大学大学院医学系研究科の秋野祐一特任助教(常勤)、沼崎穂高准教授、小川和彦教授、西尾禎治教授らの研究グループは、(株)ひょうご粒子線メディカルサポート(以下、HIBMS)との産学共同研究において、がんの放射線治療に資するため、AI機能を搭載した放射線治療計画支援装置(プログラム)Ai-Segを開発した。AI活用により、CT、MRなどの医療画像上の臓器等の領域の正確な自動抽出を可能とするソフトウェアだ。
「Ai-Seg」最大の特徴は、大阪大学医学部附属病院放射線治療科及び兵庫県立粒子線医療センターで実際に治療した計画画像及び放射線治療専門家によって抽出された、約1,500症例の様々な臓器等の領域データをAIの深層学習機能の教師データとして活用している点。その特徴を生かし、放射線治療に特化した臓器等の領域データを短時間で正確な抽出情報を提供することができるという。
医療画像データから臓器等の領域情報を抽出する技術は、放射線治療に関する医療従事者の経験年数などに依存する。また放射線治療の計画を行う上で、医療従事者が最も時間を割くのは領域抽出作業で、患者当たりの平均で数時間にも及ぶ。このソフトウェアを活用することで、担当する医療従事者の熟練度に依存することなく、わずか1、2分という短時間でこれらの作業を実施できるという。これにより、全ての患者へ同等の高品質な医療の提供が期待できるだけでなく、提供可能な患者数の増加、さらには医療従事者の負担減にも貢献できるとしている。
なおこの「Ai-Seg」は、AIによる臓器等の領域抽出を主な機能とする医療機器プログラム「放射線治療計画支援装置」として、2023年6月28日に薬事承認された(承認番号30500BZX00161000)。国内2例目となる。