スタンフォード大学が、視覚障害のある人が外出時に日常的に使う「白杖」を自動運転技術テクノロジーを転用し安価にアップデートしたと発表した。さらにその成果をオープンソースとして設計図なども公開。誰でも実際に制作することができるようにしている。
自動運転技術で使われるLIDAR技術を白杖へ転用
白杖をテクノロジーによって多機能化し、視覚障害者の外出や移動をよりスマートにガイダンスしようとする研究はいくつか行われているが、いずれも比較的高価なものとなっており、対象者の多さを考えれば社会実装においてまだ課題がある。今回、スタンフォード大の研究者が取り組んだのはコストパフォーマンスも意識した技術導入。そのため、すでに自動運転技術のベースとなっているLIDAR技術(Light Detection and Ranging=光を発射して物体の有無と距離を測定する技術)を白杖に応用する方向で技術開発を行った。
具体的には、LIDAR技術とともにGPS、加速度計、磁力計、ジャイロスコープといった複数のセンサーを詰め込んだセンサーユニットを白杖の先端に装着。ユーザーの位置、速度、方向を把握しつつ、測定データをAIで解析、周囲のマッピングを行なえるようにした。研究チームによれば、ユニットにはさらに全方向に回転できる小さなホイールがついており、これを使えば事前に設定した目的へガイドすることも可能だという。
なお、このスマート白杖と従来の白杖の性能比較試験を行ったところ、視覚障害のある人の歩行速度が平均して18%(最高25%)上がったという結果も得られた。チームではこの研究をオープンソースとし、ソフトウェアのプログラム、部品表、電子回路図などを無償でダウンロードできるようにしている。これを利用すれば、誰でも400ドル程度の実費で同じものを制作できるという。研究の詳細は論文として「ScienceRobotics」に掲載された。