飲み込み可能、電気刺激でホルモン分泌を促すカプセル開発 米MIT

NEWS,海外

source: Khalil B. Ramadi et al. ,Bioinspired, ingestible electroceutical capsules for hunger-regulating hormone modulation.Sci. Robot.8,eade9676
source: Khalil B. Ramadi et al. ,Bioinspired, ingestible electroceutical capsules for hunger-regulating hormone modulation.Sci. Robot.8,eade9676

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らが、飲み込むことができ、胃にとどまって、電気刺激で食欲に関するホルモン分泌を促すことができるカプセルを開発した。動物実験段階だが、3年以内にはヒトでの試験へ進みたいとしている。

トカゲの皮膚からカプセルのデザインを着想

 研究成果を発表したのは、MITのジョバンニ・トラヴェルソ准教授(機械工学、ブリガム アンド ウィメンズ病院 消化器内科医)らの研究グループ。グレリンなどの胃から分泌されるホルモンは、食欲を刺激するのに重要な役割を果たしているが、これらのホルモンは、空腹感、吐き気、満腹感を制御する腸神経系の一部である内分泌細胞によって生成されている。この腸神経系は、消化管を通る食物の移動を含む消化のあらゆる側面を制御しており、これに着目した先行研究では、胃に外科的に埋め込むペースメーカーのような装置で電気刺激し、胃不全麻痺の症状が改善した事例もあるという。研究グループでは、この研究では特に患者の空腹感への影響が大きかったことから、電気刺激によって分泌されたのは空腹感を促進し、吐き気を軽減することで知られるグレリンではないかと仮説を立て、まず電気プローブを使用して動物の胃に電気刺激を与える実験を行った。20分間の刺激後、血流中のグレリンのレベルが大幅に上昇しているのを確認した。

 初期の動物実験の結果を受けて、研究グループは飲み込めて、胃の中にとどまることのできるデバイスの開発に取り組んだ。体内組織は体液に覆われているので、電気刺激を与えるためには組織に直接接するために体液を逃す必要がある。この機構をデザインするにあたり、皮膚に触れた水を集め、口へ運ぶための隆起した皮膚を持つオーストラリアのデビルトカゲを参考にしたという。

 カプセルの表面は親水性コーティングが施された溝で構成されており、胃の組織から液体を引き離す役割を持つ。デバイス内部には、バッテリーで動作する電流生成機構が収められている。現在のプロトタイプでは電流は常に流れているが、将来のバージョンではワイヤレスで電流をオン/オフできるように設計される予定だという。3年以内にヒトでの実験が行えるように研究を進め、将来的に悪液質など、吐き気や食欲不振を伴う疾患の治療に役立つ可能性を示したいとしている。

論文リンク:Bioinspired, ingestible electroceutical capsules for hunger-regulating hormone modulation(Science Robotics)

関連記事

NEWS,海外

Posted by medit-tech-admin