41自治体と収集した高齢者のデータ、レセプトなどをAIに投入
千葉大学では同大の予防医学センターが、健康長寿社会をめざした予防政策の科学的な基盤づくりを目的とする研究プロジェクトJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)プロジェクトに参画している。このプロジェクトはこれまで全国の約41の市町村と共同で、要介護の認定を受けていない約30万人の高齢者を対象にし日常生活や社会参加などについて聞く調査を複数回行い、日本の高齢者の実態を多面的に描き出すことを目指してきた。調査を通じて健康に対する心理・社会的因子の重要性、健康格差実態の見える化やその縮小のための方策、環境要因に着目した、ハイリスクでない人達も含めた地域住民全体を対象とする介護予防戦略の必要性について研究している。
全国の大学・国立研究所などの30人を超える研究者が参画する横断プロジェクトで、文部科学省、厚生労働省、米国National Institute of Health(国立衛生研究所)を始めとする多数の研究助成も受けている。
今回開始される共同研究では、JAGESが持つデータのほか、自治体などが保有するレセプトや、特定健康診査の結果などを、NECのAI技術群「NEC the WISE」のひとつである異種混合学習技術で分析。そのアルゴリズム構築に、予防医学センターが持つデータ分析の知見を活用する。共同研究により、各種レセプトデータ等の分析による認知症予防の予測や財政効果測定を行うなど、地域の政策的な健康増進および医療・介護の給付費適正化などに向けた取り組みに貢献していくとしている。
今回の共同研究を担当する、千葉大学予防医学センター JAGES特任研究員の長嶺由衣子医師(家庭医療専門医)はMed IT Techの取材に対し以下のコメントを寄せた。
「医療行為と医療費に関わるデータは収集/集計されているが、どのような状態の人に、どのような介入をした時に、どのようなプロセスとアウトカムが得られるのかについてわかる縦断データや縦断分析、政策のマネジメントを支援する研究はあまりない。JAGESはこれまで41の自治体と協働で、これらを解明する追跡データを収集し縦断分析と市町村との共同研究を続けてきた。今後、介護保険や健康保険を管掌する連合会や自治体に、この共同研究の成果を活用してもらい、施策の効率化を図ってもらいたいと思っている」