日本大学の研究グループが、厚生労働省が運営する新型コロナ感染者との接触確認用アプリ「COCOA」の有効性について試算を行った。それによると、全人口の20%がアプリを利用した場合、アプリを通じて感染者と接触したことが分かった人が外出を80%控えれば、累計の感染者数を約2/3に削減できる可能性があるという。
マルチエージェントシミュレーションによる算出
今回試算を発表したのは、⽇本⼤学医学部 内科学系呼吸器内科学分野の權 寧博教授、同生産工学部マネジメント工学科の⼤前 佑⽃助教らの研究グループ。試算にあたっては、コンピュータ上に仮想社会を構築し⼈々に⽣活を⾏わせるというデータ分析⼿法「マルチエージェントシミュレーション」を採用した。
具体的には、その仮想社会で過ごす会社員、学⽣などの職業属性を有する⼈々約1000⼈を母集団として⼈⼯的に⽣成し、このうち10⼈を感染者として設定。この仮想社会において、会社に出勤する、学校に通学する、スーパーへ買い物 に⾏くなど、⼀般的な⽣活を1ヶ⽉間実施させた。このシミュレーションを、「アプリの利⽤率」 と「感染者と接触したことを知った⼈が外出を控える度合い」を20%ずつ変化させながら、反復的に実施した。
このように複数のシミュレーションを行った結果、アプリを利⽤すればするほど、感染者と接触したときに外出を⾃粛するほど、感染拡⼤を抑えることができることが分かったという。例えば、
- ⼈⼝の80%がアプリを利⽤し、接触者は外出を20%控える。
- ⼈⼝の60%がアプリを利⽤し、接触者は外出を40%控える。
- ⼈⼝の40%がアプリを利⽤し、接触者は外出を60%控える。
- ⼈⼝の20%がアプリを利⽤し、接触者は外出を80%控える。
こういった条件でアプリが運用されれば、累計の感染者数を2/3に抑制できる可能性があるとした。
研究グループは、今後は現実の⼈⼝・地図データを⽤いることで、より実測に即したシミュレーションを⾏い、さらに、アプリの効果に加え、その他の感染拡⼤対策(3密の回避、マスク着⽤の徹底、店舗の営業⾃粛、医療リソースの確保)などを複合的に考慮できるシミュレーションを実施する予定だとしている。