声帯摘出者向けにサービスの無料提供を開始 AI音声合成プラットフォーム「CoeFont CLOUD」
AI音声合成プラットフォーム「CoeFont CLOUD」を展開するYellston(東京都)は、喉頭がんや下咽頭がんなど、喉のがんにより声帯を摘出する患者を対象に同サービスの無料提供を開始すると発表した。もともとは医療での活用は想定していないサービスだが、声帯摘出者の利用者がいることを知った同社社長が、同じような方々に役立ててもらうために無料提供を決断したという。
東工大在学中、19歳の学生社長が展開するサービス クリエイター向けサービスを患者のために
現在19歳で東京工業大学の学生でもある早川尚吾氏は、Web授業やインターンで学んだ知識で高校時代からプログラマー、AIエンジニアとして活躍。昨年起業し、今年4月下旬に自身で開発したAI音声合成技術「CoeFont(コエフォント)」を利用できる無料サービス「CoeFont STUDIO」を提供開始したところ、その提供音声の美麗さが話題となり数十万の利用者を獲得した。
同社では引き続き、7月に有料サービス「CoeFont CLOUD」の提供を開始。こちらは自社開発した音声合成技術を活用し、利用者自身の音声をベースにしたオリジナルの音声データを作成できるサービス。作成した利用者が自身が利用するほかに、データをクラウド上で公開することで、他の利用者が使用した場合の利用料を徴収できるビジネルモデルも提供している。つまり、まさに自身の声を「フォント」のように有料で売買できるようにしたのだ。この他にはない新しい取り組みはかなり好評で、すでに有名アナウンサーや声優、タレントを含む1,000種類以上の声が「音声フォント」として同社のプラットフォームに登場している。
このように、このサービスはもともと映像コンテンツを作成するクリエイターやプレゼンテーション動画を作成する企業向けに開発されたものだが、少数ながらがんにより声帯を摘出する患者が、自分の声を自分が発声できなくなっても使えるように利用するケースがあった。その一人が先日全国放送のニュース番組に登場、手術前後の様子が放映された。番組の取材で初めてこの利用者の存在を知った早川社長は感激し、同じような境遇の方々の役に立つため、無料提供を決断したという。
利用できるのは有料サービスである「CoeFont CLOUD」の中でも、もっとも精度の高い音声を作成できるハイエンドプラン。多くのサンプル文章を長時間読み上げることが必要だが、音声収録後1日で利用可能な音声フォントが出来上がる。現状は自分の声を音声フォントにしたい場合、声帯摘出前に音声を収録する必要があり、すでに手術後の患者には既存の音声フォントを提供することになっているが、今後はそういった患者でも、以前収録していた音声データがあればそれを活用して作成することも予定しているという。申し込みは以下のウェブフォームで可能となっている。