スマートウォッチによる心拍変動の計測で、新型コロナの発症前検知の可能性 米マウントサイナイ大が論文

 米マウントサイナイ大の研究グループは、Apple Watchによる心拍変動の計測値の解析を通じ、新型コロナウイルス感染症を発症前に検知できる可能性があるとする論文を発表した。検査で陽性となり発症した患者の心拍変動は、感染していなかった人と比べ変動の振幅が有意に小さかったという。

発症/検査陽性7日前までに変化を計測

 論文を発表したのは米マウントサイナイ大医学部(大学病院)のロバート・ハーテン助教(消化器)らの研究グループ。2020年4月29日から9月29日まで、Apple Watch Series4以上を着用し大学内に勤務する約300人の医療従事者を追跡調査した研究内容をまとめたもの(未査読)。

今回このウェアラブルデバイスから得られる計測値から、研究グループが指標として採用したのは「心拍変動」。心拍変動は自律神経活動の状態を示すものとされ、その機序から様々な病気の兆候、または進行具合を示す可能性のあるものとして最近注目されている。理由としては今回の研究で採用されたスマートウォッチといったウェアラブルデバイスの普及により、心拍データを非侵襲で大量に収集できるようになった背景がある。

 今回の研究では、Apple Watchから得られる被験者の心電図(ECG)上のR波と次のR波との間隔の標準偏差(SDNN)を指標として解析したところ、後に陽性と分かった人は陰性だった人のSDNNと比べ、有意に変動が小さかった。またその有意差は陽性と分かった7日前まで継続的に見られたという。さらに、陽性判明後7日〜14日にかけて正常な値に戻っていき有意差がなくなることも分かった。

 心拍変動については、すでにいくつか先行研究が発表されている。例えばアメリカでは骨髄移植を受けた患者が、感染症にかかる前に心拍変動に異常が見られていたことや、敗血症診断の35時間前に心拍変動が減少したことなどが報告されている。日本における研究ではてんかんの発作予知に活用し、高精度に判別できたとする論文が2016年に発表されている。 

外部リンク(論文)Longitudinal Physiological Data from a Wearable Device Identifies SARS-CoV-2 Infection and Symptoms and Predicts COVID-19 Diagnosis