CureAppの高血圧治療用アプリ、保険適用開始 医師の生活指導など含むプログラムとして3割負担で月約2500円
治療用アプリを展開するCureAppは1日、かねてより申請していた「高血圧治療用アプリ（CureApp HT）」が同日保険適用されたと発表し、医療機関向けに販売を開始した。同アプリの使用を前提とした、医師の診療を補助する6ヵ月の治療プログラムとして保険適用されており、月3割負担で約2500円の費用となる。
単体の医療機器プログラムとして日本初の承認、
高血圧治療用としては世界初
今回保険適用を受けた「高血圧治療用アプリ（CureApp HT）」は、血圧モニタリングと生活習慣ログから、食事、運動、睡眠等に関する知識や行動改善を働きかける情報を患者個人に最適化したかたちで提供することで行動変容を促し、生活習慣の修正をサポートするのが特徴。 医師側も患者状況を医師アプリにより確認でき、診療の質の向上が期待できるとしている。
同アプリについては、自治医科大学と共同で進めた国内第III相の臨床試験の結果がすでに公表されている。治験調整医師は自治医科大付属病院 循環器内科の苅尾七臣教授。2019年12月に開始され、降圧薬による内服治療を受けていない本態性高血圧症の患者を対象に、「高血圧治療ガイドライン2019」に沿った生活習慣の修正のみを行う対照群と、ガイドラインに沿った生活習慣の修正に加え治療用アプリを使用する介入群の2群に分け比較検討を行なったもので、その結果、主要評価項目である「登録12週時時点における自由行動下血圧測定（ABPM）による24時間の収縮期血圧の平均値のベースラインからの変化量」において、介入群は対照群に比べ「−2.4 ㎜Hg」の有意な降圧効果を示している。この結果を提示された厚労省の専門部会は「成人の本態性高血圧症の治療補助」を使用目的とし、「高血圧治療ガイドラインに基づいた治療に加えて使用する」こととして薬事承認を了承、今回保険適用となった。なお適用区分は「C2：新機能・新技術」となっており、患者負担は３割負担の場合で初月2910円、その後は毎月2490円（このほか、初診料や再診料などが付加される）。
保険適用にあたっては、この臨床試験で効果が示された期間に基づき「６カ月間の生活習慣改善指導プログラム」としての適用となっている。会見を開いた同社の佐竹晃太代表取締役CEO兼医師は、この適用範囲に基づき、まずは「短期間集中プログラム」として打ち出していくと述べた。７カ月目以降の効果についてエビデンスが蓄積すれば、追加での薬事承認申請、保険適用も目指すとしている。
施設要件確定、普及拡大に向け営業体制構築も
なお、8月31日付で発出された厚生労働省の事務連絡において同アプリを使用した診療行為に対する保険適用の施設要件が定められた。具体的には以下の通りとなる。
▼一般病床200床未満の施設
「地域包括診療料」「地域包括診療加算」「高血圧症を主病とする生活習慣病管理料」のいずれかの算定実績があること▼一般病床200床以上の施設
日本高血圧学会の定める「高血圧認定研修施設」かつ「外来機能報告対象病院等」の指定を受けていること
またCureApp社としては、新たにMRを採用したほか、すでにある企業と提携契約を締結するなどして医療機関に対する情報提供活動を強化する。
関連学会が「オンライン診療も可能」と見解
今回の保険適用に際し、関連学会の日本高血圧学会は1日付でガイドラインとなる「高血圧治療補助アプリ適正使用指針 (第1版)」を公表した。この中で、治療しているにもかかわらず半数以上が基準以下にコントロールできていないという「高血圧パラドックス」の存在を指摘し、今回のようなアプリが解決のための有力な手段として期待をにじませている。
また、このアプリとオンライン診療との関係性について「一般にオンライン診療では、対面診療と比して患者からの情報取得が難しいとされるが、患者の在宅での血圧や日々の生活習慣、取り組んでいる行動等が効率的に医療従事者に提供される治療補助アプリは、診療の質を維持することに繋がるためオンライン診療とは相補的な関係である」と前向きな見解を示し、オンライン診療とこうした治療補助アプリの活用は推奨できるものとした。そして「施設要件や算定要件を満たし、特定疾患療養管理料など情報通信機器を用いた場合の点数が設定されている医学管理等（医学管理料）に基づいて診療として行う場合」は、オンライン診療のルールに基づき保険診療内で利用が可能だとしている。
外部リンク：
「高血圧治療補助アプリ」保険適用と適正使用指針作成のお知らせ（日本高血圧学会）
論文リンク：Efficacy of a digital therapeutics system in the management of essential hypertension: the HERB-DH1 pivotal trial（European Heart Journal）