CureAppが高血圧症治療用アプリの上市後データを公表、エビデンス得られたと自信

 治療用アプリを展開するCureAppが、保険収載され全国の医療機関で実利用されている高血圧治療用アプリの診療データの解析結果を公表した。臨床試験後も確認できていなかった、いくつかの臨床上の疑問についても効果を確認できたという。同社が開いた報道機関向けの会見では、同アプリを治療で活用している現場の医師も登場し、症例を紹介しながら、効果を上げるためのポイントなども解説した。

臨床試験後も残った「確認できていないポイント」とは

上市後の症例について解説したCureAppメディカル統括取締役の谷川朋幸医師

 2022年9月に日本初、高血圧治療用としては世界初となる保険適用を果たしたCureAppの治療用アプリ「CureApp HT」。同社によると、上市後、数千の医療機関で活用が開始されているという。アプリを通じて日々患者のデータが入力蓄積されている状況だが、同社では上市後もアプリを活用した治療の最適層や、臨床での知見を得ることを目的に観察研究を継続している。2023年9月に開催された第45回日本高血圧学会総会(15-17日、大阪国際会議場)では、治療開始後12週までの症例解析の発表が行われており、今回の会見ではその内容と、実臨床でアプリを活用している専門医の解説が行われた。

 先日の学会でも発表したCureAppメディカル統括取締役の谷川朋幸医師が登壇し、研究のあらましとねらいを解説した。図の通り同アプリは国内第III層の臨床試験で降圧効果が確認されているが、「降圧効果の大きいサブグループが不明」「高齢者への効果が不明」「薬物併用下での効果が不明」という疑問が残されていたという。

 そこで同社では「アプリに入力された家庭血圧」をベースに後ろ向きの観察研究を行っている。上市直後の2022年9月から2023年4月までにアプリを処方された患者588例を対象とし、最終的には12週後まで一貫して週5日以上、血圧を入力していた321例を解析した。こうした実臨床データ、いわゆる「リアルワールドデータ(RWD)」を自ら公表するのは初めてのことだ。

 谷川医師によると、解析の結果、65歳以上の高齢者での降圧効果も確認でき、むしろこの層の方が降圧効果は顕著だったこと、服薬中の患者であっても効果が見られたことが確認できたとし、残されていた臨床上の疑問はクリアしているとした。ただし、「血圧計から直接値を入力していないことによる信頼性」や「対象集団からの脱落が多いこと」など、リアルワールドデータゆえのさらなる疑問点も残る。こうした点に関しては、より症例を増やす意味もあり、現在治療期間全体となる24週の期間での観察研究を続けていること、その後の研究も行って学会発表することでさらに確認していきたいとしている。

※ 谷川医師によると、アプリでは血圧入力手段は患者本人のアプリへの手入力のみとなっており、血圧計からのデータ読み込みには対応していない

実臨床で取り組む専門医、キーワードは「自己効力感」

自らの臨床の取り組みを紹介、解説した医療法人社団 野村医院 野村 和至 院長

 続いて、このアプリを活用した治療に実臨床で取り組んでいる医療法人社団 野村医院の野村和至院長が、自身の症例を取り上げながら、臨床上での実感や知見を紹介した。野村医師が診療しアプリを導入したのは13症例で、そのうち2例は中断および1度も使用されなかったため除外するとしても、残る11例で降圧効果が見られたのは8例。一方、5mmHg以上の改善が見られなかったのは3例だった。

 効果が見られた症例の中で、野村医師の印象に残っている1例では、降圧効果が見られにくい冬場にもかかわらず導入後顕著に血圧が下がり続け、薬物投与を中止することができたという。それだけでなくアプリで得られた生活改善の知識を家族にも伝え、家族全体での改善が見られたとする。当初はアプリを活用した治療に半信半疑だったが、生活指導を行ってもアドヒアランスが上がらなかった患者がアプリに取り組むことで改善していく例を複数経験し、途中からアプリをしっかり活用するよう診療でも指導するようにしたと語った。その中で「数値目標の達成より、行動変容しようとしている意識や、その取り組みがうまくいき改善したときにしっかり褒め、自己効力感を育てること」が大切だと実感しているという。

 同社では24週での解析結果や、その後についても追跡して解析し、学会等で発表したいとしている。