CYBERDYNE、新たな「サイバニクス」機器を発表 脳信号での意思伝達、機器操作をさらに容易に

 

Cyin™の製品イメージ

2018年1月9日、CYBERDYNE は 「サイバニクス技術」による新たなインタフェースを開発し、病気等で発話や身体動作が著しく困難な患者の意思伝達や機器操作を可能とする機器を販売開始すると発表した。機器は障害者総合支援法の補装具費支給制度の対象となり、自治体へ申請し認められれば購入費用が補助される。

HAL®の基礎技術を転用し新たな「BMI」を開発

CYBERDYNEが呼称する「サイバニクス」とは、脳から筋肉へ送られる微弱な信号を「生体電位信号」として捕捉、解析し、機器操作に必要な信号へと変換、出力する技術。同社では「人と情報系とロボット系を機能的に繋ぎ、物理的・情報的・生理的インタラクションを実現する」としている。主力製品である下肢リハビリ用機器、医療用「HAL®」の中核技術だ。

今回発表された機器「Cyin™」は、この医療用「HAL®」で培われた技術をもとにした。重度の疾患を持つ患者の生体電位信号は非常に微弱である場合が多く、センシングやデ ータ解析アルゴリズムに高度な技術を必要とする。こうした方々の意思伝達という用途に合致したセンサーやアルゴリズムを新たに開発し検証を重ね、新たなサイバニックインタフェースと して製品化を実現したという。そのため、病状の進行等により自らの意思で身体を全く動かせない患者であっても、微弱な生体電位信号を検出することができれば、この製品やパソコン等を出力装置として介する意思伝達や、ナースコールなどさまざまな環境制御機器の操作が可能となる。

また入力ポート/出力ポートを各8個持つため、複数の部位の生体電位信号を同時に利用し複雑な操作や、複数機器の操作も可能で、 使用者の身体状況やニーズに応じ既に使用されているセンサーなどの入力装置や、 パソコン等の出力装置と組み合わせることもできるという。同社では例えば、音声読み上げ型の出力装置と組み合わせれば目を閉じたままでの意思伝達も可能だとしている。脳の信号を捉えて機器操作に活用する研究は、いわゆる「Brain Machine Interface」技術と呼ばれ日本を含め世界各地で研究が行われているが、非侵襲かつ動作を伴わずに脳の信号のみで操作を実現できる技術はほとんど例がない。

 

AMEDの臨床研究で効果を検証

この技術に関する基礎研究及び臨床研究の一部は、H27~28 年度 AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の障害者対策総合研究開発事業「進行した ALS 患者等を含む障害者のコミュニケーション支援機器の開発」により推進され、また内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT) 「重介護ゼロ社会を実現する革新的サイバニックシステム」の研究成果の一部も活用されている。その一環として、AMED研究開発事業のリーダーである国立病院機構新潟病院院長の中島孝氏(専門:神経内科学、内科学)が主導する多施設の臨床試験が行われ、15人の被験者を通じ前向きな効果が観察された。

なお同社はこのサイバニクス技術で、様々なIoT機器を操作できるプラットフォーム「IoH(Internet of Humans)」構築を目指しており、2017年8月にはコヴィアと合弁会社を設立している(既報)。

https://staging.sakura.ne.jp/medit/cyberdyne-and-covia-established-a-joint-venture-company-by-utilizing-iot-in-medical-care-and-nursing-care/

今回の機器の発表は主に患者向けのソリューション提供だが、技術的ハードルがもっとも困難と想定されるALS患者等の生体信号解析技術を獲得したことで、一般向けソリューションの提供にも大きなアドバンテージを得たと考えられる。今後「Cyin™」を通じた既存機器とのパッケージ提供や、ターゲットを変えた新製品の提供などが期待できそうだ。