生検画像から膵腺がんを検出する人工知能の開発に成功、正解率94% 久留米大学とメドメイン
日本の研究グループが、膵臓の病理組織画像を解析し、膵腺がんを高精度に検出できる人工知能の開発に成功したと発表した。正解率も94%と高く、今後この成果を活用した膵臓がん検出のシステム構築が進むことを期待するとしている。研究成果は論文として英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載された。
久留米大学病院の持つ生検標本スライド120例で解析
研究成果を発表したのは久留米大学医学部病理学講座の矢野博久教授、大学病院病理部 秋葉純教授、内藤嘉紀准教授らを中心とする研究グループ。日本における膵がんの罹患率・死亡率は増加しており、また、症状が出たときにはすでに進行している例も少なくないことから、早期かつ精確な診断法の確立が求められている。治療方針の決定には、正確な画像診断と同時に病理細胞学的な診断も必要となるが、現在主流となりつつある「超音波内視鏡下穿刺吸引法」で採取できる細胞組織断片は微小であり、病理診断に難渋する症例もあるという。
この課題を克服するため、研究グループでは久留米大学病院、及び全国の膵臓病理専門医を有する医療機関、医療向けAIの研究開発を行うベンチャー、メドメイン (福岡市)と多施設共同研究グループを形成、人工知能開発を行った。具体的には、久留米大学病院が膵超音波内視鏡下穿刺吸引生検標本スライド120本を提供し、標本をデジタル化したのち、深層学習のための教師データを全国の共同研究施設の病理医が作成、深層学習を行なうことで開発したという。精度の検証にあたっては、3名の膵臓を専門とする病理医により診断のコンセンサスが得られた症例40スライドを別途、検証症例として用意した。
結果、膵腺がんの検出において、ROC-AUCが0.98、正解率94%、感度0.93、特異度0.97という極めて精度の高い結果が得られ、病理医による検証の結果でも十分な妥当性が示されたという。研究グループは、今回の結果は単一の機関から提供された120という少ない症例の検証結果であるとの課題を示しつつ、今後は多施設からの症例収集でさらなる検証を行い、膵臓がん検出のシステム構築が進むことが期待されるとしている。研究成果は英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版に、2021年4月14日付で公開されている。