脳波データを用いた「認知症自動判断AI」開発、精度は最高で91% 大阪大
大阪大学の研究グループが、安静時の脳波を解析するAI(人工知能)を開発し、健常もしくは認知症(アルツハイマー病、レビー小体型認知症、もしくは特発性正常圧水頭症) の識別が可能になったと発表した。開発したシステムは、AIの学習に利用していない施設の脳波データに対しても有効性が認められ、さらに、認知症や軽度認知障害の原因 (背景病理) も推定できるという。
国内最大規模の脳波認知症データセットを構築、性能を検証
脳波にAIを適用することで、アルツハイマー型認知症と健常者を識別、あるいは認知症状の程度を推定することができるという先行研究は多く上がっている。しかしこれらの多くは単施設かつ少数の脳波データを対象とした評価であり、一般的に脳波データに関しては施設に特有の特徴が含まれていることが多いため、他施設の脳波を正確に識別できないという課題がある。また、脳波からは、現在多くの未判定の患者が存在すると思われる軽度認知障害(MCI)の背景病理を推定することは困難だった。
MCIの背景病理はMRI 検査や PET検査、脳脊髄液検査などの高価かつ侵襲的な検査、計測データを解釈するために経験豊富な専門医の診断も必要であるため、高齢社会の対応のひとつとして、精度を担保したうえでより安価、迅速な診断手法が求められている。
そこで研究グループでは、三施設の専門医グループがMRI、PET、認知機能テストなどの包括的な診断を行うことで、570名の被験者の背景病理を同定することにより、国内最大規模の脳波認知症データセットを構築した。このデータセットを利用し脳波マイクロステートを捉えるよう設計された AI モデルを構築、性能を検証した。
結果、1つの施設 (=大阪大学医学部附属病院) のみで脳波を学習したAI でも、学習に用いていない施設 (=高知大学医学部附属病院と日本生命病院) の脳波を識別できることを確認した。例えば、健常群と認知症群を81–91 %の精度で識別できているという。さらに、認知症・軽度認知障害の背景病理の推定に関しては、軽度認知障害の背景病理がアルツハイマー病群、レビー小体型認知症群、もしくは特発性正常圧水頭症群かを72%の精度で推定することに成功したとしている。
研究グループではこれらの結果により、認知症の早期発見が脳波によって可能になったとし、また、軽度認知障害と認知症の間に共通する脳波特徴があることが示唆されたため、これらの疾患の原因解明の糸口となる可能性があるとしている。