術後における心房細動の高リスク患者を高い精度で同定できる人工知能(AI)を、九州大学の研究グループが開発した。開発したAIを活用することで、高リスク患者に対し術後管理を強化し、合併症を予防できることが期待できるとしている。
研究成果を発表したのは九州大学病院の遠山岳詩医員および井手友美診療准教授、九州大学医学研究院の池田昌隆助教らの研究グループ。不整脈の一種である心房細動は脳梗塞を始めとした重篤かつ致死的な合併症を引き起こしうるが、患者の約半数には自覚症状がなく、早期診断に関する新たな診断アプローチの確立が求められている。
研究グループでは術後心房細動に着目し、2015年から2020年に九州大学病院において外科手術を受けた患者の術前心電図を対象に術後心房細動の発症を予測するAIの開発に取り組んだ。開発したAIモデルにより、陽性的中率10%(心房細動が術後に発症するリスクがあると予測した患者の10%に心房細動が発症)、陰性的中率99%(心房細動が術後に発症しないと予測した患者では、100人中99人で心房細動が発症しない)と高い精度で術後心房細動の層別化ができたという。研究グループでは、開発した AI 診断モデルを初期スクリーニングとして用いることで、術後心房細動の発症リスクが高い患者を同定でき、その患者に対する術後管理を強化したり、術後心房細動の診断がついた患者については、退院後にウェアラブル端末などを利用した適切なフォローアップを行うなど、心房細動の早期診断・治療による合併症予防が期待できるとしている。