当事者 X 当事者 X エンジニアで共創する三重奏の医療DX 「認知症フレンドリーテック」
第二章:アクセラレーションが「自走」で進む、細やかな仕掛け
アイデアソン、ハッカソンを開催するには、場所と協力者のリクルートが欠かせないが、通常であればここでそれなりの費用がかかるもの。しかし内田医師はアイデアソン、ハッカソンを自分の時間を費やすという以外、ほとんど出費を伴わずに開催にこぎつけられた。ここには「エンジニアドクター」である内田医師自身の思いの強さが協力者をすぐに集められたという面と、自発的な活動のハードルを下げる、福岡市の細やかな仕掛けがあった。
内田医師がアイデアソン、ハッカソンを実施したいと相談した相手の中に、福岡市が運営に関わる「エンジニアカフェ」の関係者、そこに集う仲間たちがいた。このリアルサイトは、福岡市在住のエンジニアが自発的に様々な活動ができるよう、技術サポートや仲間と繋がるコミュニティ支援を行う拠点だ。登録すれば日常的に作業ができるスペースが設けられているほか、世話役となるエンジニアもおり、来所者の困りごとや相談の対応も行う。登録者が主催すれば無料でイベントも開催できる(参加費を設定しないイベント限定)。特徴的なのは、エンジニア支援ということから、電子工作などもできるようパーツやガジェットも置いてあり無料で使えることだ。つまり思いさえあれば、テック系のイベントはほぼどんなものでも最小の経費で開けるのである。
自治体がかかわるかたちでここまでサポートが充実している例はなかなかないが、福岡市は「エンジニアフレンドリーシティ」 と銘打ってエンジニアが活動しやすい様々な施策を行っており、その目玉のひとつがこの拠点。福岡のエンジニアたちはこうした「インフラ」を活用し、様々な活動や模索を気軽に行える環境にある。
自らがエンジニアを目指す中で、内田医師はエンジニアカフェで行われた「誰かのためのものづくり」というイベントを見て、この場所でのハッカソン開催を着想した。エンジニアではない人たちのニーズやアイデアの実現を手伝ってみるという、自身が構想していたイベント内容そのものだったからだ。内田医師はこの拠点を利用して活動しているLINEのエンジニアによるコミュニティ「Developer Group Q-shu(LDGQ)」のメンバーや、自身が学んだ「もいせん」の講師などに相談し、イベントの内容を組み上げていった。もちろん彼らは内田医師の熱意に賛同して手弁当で集まっている。