東北大学大学院歯学研究科が、NTTドコモとの共同研究で口腔がんの診断支援の可能性を示す成果を発表した。デジタルカメラで口腔撮影した舌の画像をもとに、深層学習を用いた口腔がん検出モデルを開発したという。
口腔がんの前駆病態を高精度に検出成功
口腔がんの治療においても早期発見、早期治療は求められる課題だが、そのためには前駆病態である口腔潜在的悪性疾患を正確かつ迅速に診断することが必要となる。研究グループではこのプロセスに貢献する手法確立を目指し、人工知能(AI)の活用を試みた。
具体的には、口腔扁平上皮癌(OSCC)、白板症、その他の口腔粘膜疾患患者424名の病変画像1043枚を用い、物体検出でよく用いられるアルゴリズムである「Single Shot Multibox Detector」※を活用して画像から口腔疾患とその部位を検出するモデルを構築した。学習には口腔癌の画像523枚を用い、口腔癌(n=66),白板症(n=49),その他の口腔疾患(n=405)の画像で性能を評価した。
その結果、OSCCのみの検出とOSCCと白板症の検出では、感度は93.9%対83.7%、陰性的中率は98.8%対94.5%、特異度は81.2%対81.2%となった。
研究グループは、本研究は一般の歯科医院や患者さん個人において、口内炎等の口腔粘膜疾患と口腔がん等の精査が必要な疾患の鑑別を行う診断補助機器の開発を前提としており、今後さらに高い精度のモデル構築と、特殊な技術・機材を用いなくても口腔がんを確定診断できる技術開発に取り組んでいくとしている。
※ Single Shot Multibox Detector:画像認識に特化したニューラルネットワークである「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」を発展させた物体認識アルゴリズム。1度のCNN演算で物体の「領域候補検出」と「クラス分類」の両方を行え、検出処理の高速化を可能が可能となった。