X線画像のAI解析で骨密度を推定、既存検査機器との相関係数最大0.89 東京大

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 東京大学の研究グループが、腰のX線画像をAI(人工知能)で解析し、腰と足のつけ根の骨の密度を高精度に推定できるシステムを開発した。画像に映っていない部位も解析できるのが特徴で世界初だとしている。

 

 研究成果を発表したのは、東京大学大学院医学系研究科の茂呂徹特任教授と田中栄教授らの研究グループ。骨がもろくなる骨粗鬆症に対する対策は高齢社会が直面する課題の一つだが、骨折するまで気づく人が少なく、多くの人が検査や治療を受けていないことが明らかになっている※1。また国内の推定患者数は約 1,590 万人にのぼる一方で、骨粗鬆症検診の受診率は約5%にとどまっており、早期発見・早期治療の重要性が指摘されている。

 研究グループはこれらの課題解決をめざし、X 線画像から腰(腰椎)と足のつけ根(股関節)の骨密度をAIで推定する新しい技術を開発した。整形外科の外来で腰痛などの診察時に頻繁に撮影される腰のX 線画像を活用することで、画像に映っている腰はもちろん、映っていない足のつけ根の骨の状態まで高い精度で推定できるという。

 この「AI骨粗鬆症診断補助システム」は、地域住民を対象とした長期健康調査データ(ROADstudy)をもとに開発されたもので、研究ではDXA装置(骨密度測定装置)での計測値との比較において、腰椎で 0.89、股関節で 0.74 という高い相関係数※2を示しており、従来の代替測定機器と同等以上の推定精度が期待できることが確認された。このシステムはすでに多くの医療機関に設置されている X線撮影装置をそのまま活用できるため、特別な機器を新たに導入せずとも、日常的に撮影されている X 線画像から骨の状態を“ついでに”評価することが可能になるという。

 研究グループは、今回の研究成果は、骨折の前に病気を見つけて治療を開始できる可能性を拓くものであり、健康寿命の延伸、生活の質の向上、高齢者の自立支援に寄与することが期待されるとしている。

※1 日本整形外科学会の調査によると、足のつけ根を骨折して医療機関を受診した人の約 75%が、骨粗鬆症の治療を受けていなかったと報告されている。
※2  2つのデータの関連の強さを-1〜1 の数値で示した指標で、1 に近いほど「よく一致している」ことを意味する。

論文リンク:Development of artificial intelligence-assisted lumbar and femoral BMD estimation system using anteroposterior lumbar X-ray images(Journal of Orthopaedic Research)

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Posted by medit-tech-admin