乳がん術前化学療法の効果を予測するAI開発、複数モデルの組み合わせで精度95.15%達成
腫瘍組織を縮小させ、乳房温存率の向上や再発・転移予防が期待できる、乳がん術前化学療法の奏効率を高めうるAIが発表された。複数のAIモデルを条件分岐で使い分ける手法で判定精度を向上させているのが特徴だ。
研究成果を発表したのは、東京医科大学 分子病理学分野黒田雅彦主任教授、沈彬客員講師、乳腺科学分野石川孝主任教授、上田亜衣講師、人体病理学分野長尾俊孝主任教授らを中心とした、米国コーネル大学との国際共同研究グループ。近年、乳がんの治療は飛躍的に進歩しており、特に局所進行乳がんに対しては術前化学療法が一般的な治療法となっている。術前化学療法により腫瘍組織が縮小し、乳房温存率の向上や再発・転移の予防が期待できる一方、現在はまだ乳がんのサブタイプ以外に、術前化学療法への感受性を示す明確な因子が特定されていない。
研究グループではこの課題に対し、がん組織とがん細胞の特徴にそれぞれ合わせた人工知能技術を利用し、病理形態学的情報の抽出・解析が可能か試みた。具体的には、ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色した組織画像の解析に、構造異型のパターンを効率的に学習できる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、核異型のパターンを学習するのに優れているサポート・ベクター・マシン(SVM)とランダムフォレスト(RF)をベースとしたAIモデルをそれぞれ独立したかたちで構築した上で、条件分岐で複層的に使用する「AIパイプライン」を開発した。このAIパイプラインで103の症例画像を解析したところ、判定精度を95.15%(AUC)まで高められたという。単独モデルよりも約10%精度を向上させることができたとしている。