日本を含めた各国の研究機関で、細胞や生体材料で人体組織を「3Dプリンティング」する研究が進んでいるが、このほどドイツの研究機関が心室を模した組織を3Dプリンティングし、自発的な拍動が100日以上継続したと発表した。拍動させるところまで実証した研究は世界初とみられる。
心筋細胞にコラーゲンタンパク質などをまぜた「バイオインク」をプリント
査読前論文ではあるが、注目すべき成果を「bioRxiv」に発表したのは、ドイツのフリードリッヒ・アレクサンダー大学のフェリックス・エンゲル教授らの研究チーム。研究チームでは、心筋細胞にコラーゲンタンパク質とヒアルロン酸を混ぜた「バイオインク」を調製し、ゲルの中に3Dプリンタからバイオインクを注入、心室を模した高さ14mm、直径8mmの風船状の組織を「プリント」した。実際の心室の6分の1程度の大きさだ。この後、ゲルを取り除き組織だけを残したところ、プリントしてから1週間後から拍動し始め、100日以上継続したことを確認した。
ちなみに拍動ペースは毎分27.8±6.0から41.3±3.5で、薬剤で拍動ペースを前後できる可能性も示したという。研究チームでは、今回開発した「バイオインク」は心筋細胞だけでなく線維芽細胞や血管細胞などを使ったものにも応用が可能としており、健康な心臓モデルだけでなく、病気の心臓モデルもプリントできる可能性もあるとしている。
論文リンク:Direct 3D-bioprinting of hiPSC-derived cardiomyocytes to generate functional cardiac tissues(bioRxiv)