診断が難しいとされる「肺高血圧症」の新たな診断アプローチを日本の研究グループが発表した。臨床データに加え、心エコー画像をAI(人工知能)で解析することで、ガイドラインに基づく従来の診断法より高い精度を示したという。
分類精度が59%に向上
研究成果を発表したのは、琉球大学大学院医学研究科 循環器・腎臓・神経内科学講座の楠瀬賢也教授と帝京大学大学院医療技術学研究科 診療放射線学専攻の古徳純一教授の研究グループ。肺高血圧症は肺の血管(肺動脈)の血圧が高く息切れを生じる状態を指すが、血圧計で簡単に測ることができる全身の血管と違い、肺動脈の血圧は侵襲性の高い心臓カテーテル検査でしか測ることができないため、発見が遅れることが多い。ただ近年、肺高血圧症に対する治療薬(肺血管拡張薬)および治療法(カテーテルバルーンによる肺動脈拡張術)が進展し、肺高血圧症は早期診断・早期治療介入することによる予後の改善が期待できる状況となっており、より早期に正確な診断ができる手法開発が課題となっている。そこで研究グループでは、臨床指標および心エコー図検査指標に人工知能(AI)の一種である機械学習を用いることで、肺高血圧症のタイプをより明確に区別できるかどうかを検討した。
具体的には885人の症例データを用い、肺高血圧症の非侵襲的診断を目指すために機械学習よるAIモデルを開発した。このモデルは24の臨床指標を変数として活用するもので、症例を「肺高血圧症なし」「左心不全を伴う肺高血圧症」「左心不全を伴わない肺高血圧症」の3つのグループに分類できるかを検証したところ、このAIモデルは3つのグループを効果的に分類でき、ガイドラインに基づく従来の診断法と比較してより高い精度で識別したとことが確認できた(マクロ平均分類精度が52%から59%に向上)。
研究グループではこの研究成果により、心エコー図のデータを用いてより迅速かつ正確に肺高血圧症のサブタイプを識別することが可能になったとしている。
論文リンク:Echocardiographic artificial intelligence for pulmonary hypertension classification(Heart)