「思う」だけでロボットを操作できるプログラムを人工知能で開発 スイス連邦工科大学ローザンヌ校

 なんらかの物理的インターフェイスで操作することなく、脳の信号だけでロボットを操作できるプログラムをスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPLF)の研究チームが開発した。四肢麻痺に苦しむ患者の助けになることを目的としており、プログラムのロボット操作アルゴリズムに関しても、簡単なステップで利用者自身がフィードバックできるよう工夫されている。

「それは違う」と思考するだけでロボットの操作を補正、アルゴリズムを開発

 プログラムを開発したのはスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPLF)LASA研究室のAude Billard所長(教授)らの研究チーム。2009年設立のこの研究室は、ロボット制御プログラムを人工知能技術で開発する取り組みを長年続けている。研究チームは今回、声も含め、ロボットを操作するための物理的なインターフェイスを使えない四肢麻痺患者がロボットを使えるようにするため、脳信号のみで指令を行える手法を開発した。

 具体的には、まず脳信号とロボット制御を結びつけるため、被験者にEEG(脳波)を計測するヘッドキャップを装着してもらい、研究室が開発しているロボットアームの動きを観察してもらった。最初にまずロボットを一通り動かしながら、その中で患者自身が希望通りの動きでない場合に「それは違う」というメッセージを念じてもらうことで、ロボットの動きを調整するとともに、患者の特定の脳信号がその意味を持っていることを特定していったという。この作業を繰り返すことで、操作プログラムに組み込まれた「逆強化学習」アルゴリズムがロボットの動きを補正、精度を上げていくとともに、最終的には「間違いを伝える」信号だけでなく、他の信号もロボットの特定の動きに変換できるようになった。

 ロボットアームを操作できる技術に目処はついたが、研究チームは四肢麻痺の患者が車椅子を操作できるようになるまで開発を進めたいと考えており、さらに脳信号だけでなく患者が見ている視覚も情報化し組み合わせ、ロボットがより高度な動きができる技術開発を実現したいとしている。

研究詳細(英文):Mind-controlled robots now one step closer(ScienceDaily)