糖尿病教育入院の指導内容をICT活用フローに変更、臨床研究で良好な結果 筑波大学など3者

 患者数の多い生活習慣病である「II型糖尿病」は、日本全体の医療費への影響も大きく発症および重症化予防手法の確立が求められているところだが、筑波大学らの研究グループが、教育入院時に行われる指導プログラムのすべてをICTを活用したフローに組み直し小規模な臨床研究を行なったところ、ほとんどの被験者で良好な結果が確認されたと発表した。研究グループではさらに症例を積み重ね、企業/健康保険組合向けの社会実装を目指すとしている。

CGM、ウェアラブル、eラーニングなどを同時投入するフローを開発

 筑波大学、ハビタスケア、JMDCの3者は、ウェアラブル、持続グルコースモニタリング(CGM)、ヘルスケアアプリなどの各種ICTデバイス、さらには宅配食やオンライン教育と専門職による指導を組み合わせた総合的な教育・体験型プログラム「KiDuKi™」を開発した。糖尿病教育入院時に実際に行われるプログラムを網羅したうえで、血糖値測定はCGM、運動モニタリングはウェアラブルデバイス、教育はeラーニングコンテンツといったように、入院せずとも行えるようICTツールを複数導入したものだ。研究チームではこのプログラムの効果検証として、筑波大学附属病院を中心とした医療機関を受診していた2型糖尿病患者を対象にこのプログラムを提供、データを解析した。

 これまで計9人の患者で同意が得られ、そのうち8人の患者が約2週間のプログラムを完遂。結果としてうち7人で解析可能なCGMデータが得られ、いずれもプログラム期間中の平均血糖が介入前より改善した。またHbA1cについてもプログラム修了から1カ月後、3カ月後ともに8人中6人で改善がみられたという。解析対象者のHbA1c変化の平均は1カ月後で-0.325ポイント、3カ月後で-0.625ポイントと、3カ月後でより高い改善傾向が観察されたとしている。プログラム終了から3カ月後の体重変化は8人中7人で減少が確認され、平均では-0.8kgだった。研究チームではプログラム終了後もHbA1cと体重の減少傾向が示されたことから、このプログラムによって患者の持続的な行動変容が得られたことが示唆された、としている。

 今後、この研究から得られた知見を基に症例をさらに積み重ね、企業/健康保険組合向けに内容を最適化したものについて初期展開を進めているという。この結果は第65 回日本糖尿病学会年次学術集会の一般演題 「糖尿病療養指導:患者教育技法 2」として学会発表されている。