AI(人工知能)技術で、外科手術中の切除ラインの目印となる、生体内構造物「疎性結合組織」を強調表示するプログラム医療機器を活用した国内初めての外科手術が実施された。製造販売を手がける医療スタートアップのアナウト(東京都)が発表した。
内視鏡システムや手術支援ロボットから受けた映像信号を解析、強調表示
今回手術に使用されたプログラム医療機器「EUREKA α」は、手術用の内視鏡システムや手術支援ロボットから受けた映像信号を解析し、術者が通常確認するモニターとは異なるサブモニター上に、疎性結合組織をリアルタイムに水色で強調表示することで外科医の視覚認識を支援するもの。4月12日に製造販売承認を受けている(承認番号:30600BZX00061000)。
疎性結合組織とは臓器と臓器の間に存在する繊維状の構造物であり、がん等の手術における切除ラインの目印となる重要な生体内構造物。熟練医は適切な緊張をかけることにより疎性結合組織を露出しながら手術を進めていく。この露出と剥離の手技は世界共通の必須技術と言えるものだが、日本において特に発展しているという。
このシステムを国内で初めて使用し、手術を実施したのは兵庫医科大学病院 上部消化管外科の篠原尚 副院長(主任教授)と、虎の門病院 下部消化器外科の 黒柳洋弥部長(副院長)。両氏はそれぞれ「解析精度は全く問題ないし、(映像の)タイムラグも感じなかった」「手技の邪魔にならず、AI画像を見ながら問題なく手術ができる(篠原氏)」「正しく剥離層(結合組織)を認識していた。実際の手術は剥離層だけを見るわけではないが、少なくとも水色がきれいに出ているときは、手術がスムーズに進んでいた(黒柳氏)」と前向きな評価をコメントしている。
同社ではこの2つの実施例が生み出されたのを受け、7月17日よりプログラム医療機器としての販売を開始した。今後も外科領域において医師のフィードバックを受けながら開発を継続していくとしている。