2016年12月5日、株式会社FRONTEOとその100%子会社であるFRONTEOヘルスケアは、NTT東日本関東病院との共同研究により開発を進めているFRONTEO独自開発の人工知能エンジンKIBIT(キビット)を搭載した「転倒転落予測システム」のベータ版が完成したと発表した。その概要を、12月6日から東京で開催されている『Health2.0 ASIA-JAPAN』でプレゼンテーションしている。
電子カルテの記述から可能性を予測
今回ベータ版が完成した「転倒転落予測システム」は2015年2月より開発を進めているもので、KIBITが電子カルテ内の自由記述のテキストデータを解析し、入院患者の転倒・転落の予兆を察知、発生件数を減少させることで、医療における予測困難な有害事象の防止と、医師や看護師の負担軽減、病院の安全管理への寄与を目的としているという。『Health2.0 ASIA-JAPAN』のセッションの中で、FRONTEO株式会社 取締役CTO(行動情報科学研究所 所長)の武田秀樹氏がシステムの概要を説明した。
FRONTEO、FRONTEOヘルスケアとNTT東日本関東病院では、これまで蓄積された実際に転倒・転落した患者の記録の解析を通じ、電子カルテからどのような患者の記録を捉えると予兆を察知できるかの検証を重ねた。その結果、「意識障害」や「自立行動」に関連する患者が発した言葉(主訴)や看護師の所見に着目し、実際に転倒に繋がったケースやベテランの看護師から見て危険と感じる記述を教師データとしてKIBITに学習させて解析を行うことで効果をあげられたという。
国際標準の手法より識別感度が高いと自負
これまでの検証により、従来の転倒リスクを評価する国際標準の予測手法「Morse Fall Scale(モース・フォール・スケール)」が実際に転倒した患者344人のうち195人(57%)を「リスクあり」と判別したのに比べ、「転倒転落予測システム」は、295人(86%)の患者を「リスクあり」と判別し、KIBITがより高い識別精度を達成したと発表した。
今後は、NTT東日本関東病院でさらなる検証を進める他、臨床試験を行いながら、既存の電子カルテや表示システムとの接続、さらに看護師による使い勝手の検証を進める予定。さらに要望に応じ、本システムの導入に関心を持つ他の病院にも提供し、今年度中の医療現場での稼働を目指すとしている。