慶應義塾大学理工学部の研究グループが、誰でも扱え、スマートデバイスにデータを送付できる脳波計を使い、約30秒の脳波計測で軽度認知障害(MCI)/認知症の可能性を示唆することに成功したと発表した。今後より幅広く検証を行い実用化を目指したいという。
スマートデバイスへ即時にデータを送付する脳波計を活用
研究成果を発表したのは慶應義塾大学理工学部の満倉靖恵教授、同大学グローバルリサーチインスティテュートのブライアン・スマリ特任講師らの研究グループ。日本における認知症患者は増え続けており、現在、65 歳以上の6人に1人は発症していると言われている。今後も増加が見込まれるため、早期の発見、医療介入が求められるが、MCIや認知症の診断には専門医による試問やMRI検査など多くのプロセスが必要で時間もかかるうえに、患者が病院での検査を忌避するなどの問題もあり、より簡便かつ精度の高い検出法の開発が期待されている。
研究グループではデータ補正をリアルタイムで行え、計測値をスマートデバイスに送付可能な簡易型脳波計(シングルチャネル)を使って、医療機関などに行かずともMCI/認知症の可能性をスクリーニングできる手法開発を目指した。具体的には120 名の被験者を対象に、 健常・MCI・認知症の 3 グループに分け、簡易型脳波計で脳波を計測。計測したそれぞれのグループで脳波の周波数の特徴を明らかにすることで、それぞれの峻別が可能かを検証した。
結果、健常群とMCI/認知症群との間で、3Hz、4Hz、および10Hz以上の周波数でそれぞれを特定できるほどの有意なパワーの違いが観察され、区別するのに十分であることが確認された。この結果は医療機関でも使われるマルチチャンネルの脳波計を使用した同様の研究と精度が同等だった(88.89%)。研究グループでは今後さらに多くの検証を積み重ね有効性を示し、家庭でも簡便にMCI/認知症を検査できるようにすることで、早期発見に貢献したいとしている。
論文リンク:Frontotemporal EEG as potential biomarker for early MCI: a case–control study(BMC Psychiatry)