「富岳」活用でがんの遺伝子ネットワーク分析を1日以内に実現 医科歯科大と富士通研究所

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東京医科歯科大学と富士通研究所は10日、スーパーコンピュータ「富嶽」の計算力と富士通のAI技術を活用し、これまで数ヵ月かかるとされるがんの浸潤や転移との関連を予測する計算を1日以内で実現したと発表した。今後はRNAなどの解析にも活用し、がん研究を後押しするとしている。

 

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富岳の高速シーケンス処理+富士通研究所のAI技術で高速かつ自動で解析

がんの機序を解明するため、世界の多くの機関でゲノム解析を中心とした研究が行われているが、最近の研究では、ゲノム変異同士が相乗的にがん化を促進するという新たな発がん機構が発見されており、こうしたがんがどのように発生し、多様性を獲得していくかを解明することは極めて重要な課題になっている。この解明には2万個の遺伝子間の影響関係を表すネットワークの推定を行う必要があるが、大学などで利用可能なスーパーコンピュータを独占的に用いても数ヵ月を要し、かつ独占的に用いること自体が現実的ではないため、実質的に不可能だった。

富士通の公開資料より:Deep Tensorの機能解説

今回、文部科学省のスーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム※1に採択され、富岳を活用しての解析を試みた。解析には、富士通のAI技術「Deep Tensor(ディープ テンソル)」を活用。この技術は富士通研究所が従来の機械学習技術を改良して開発した独自技術で、多様な表現形式を持つグラフ構造のデータを、ベクトルや行列を拡張したテンソルと呼ばれる数学表現に統一する。さまざまな分野で活用可能な技術だが、創薬分野での活用を検証した別の実験では、サポートベクターマシン技術を用いた学習よりも、約100倍の数10万種規模の化合物の構造と活性の関係を学習し、既存技術に比べ約10%向上となる約80%の活性予測精度を達成している。

今回は「富岳」を用いて、2万個の遺伝子データ解析から上皮性がん細胞における遺伝子間の影響関係を表すネットワークを抽出後、「Deep Tensor」を用いてがんの浸潤や転移との関連を予測、その予測根拠定時まで、1日以内で実現した。

今後、東京医科歯科大学と富士通研究所は、近年発見されたノンコーディングRNA※2と呼ばれる膨大な遺伝子情報を含めた観測データにも適用し、さらに最先端のがん研究を進めていきたいとしている。

※1 文部科学省のスーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム 
「富岳」を用いた成果を早期に創出することを目的として文部科学省が設置したプログラム。

※2 ノンコーディングRNA
ゲノムに基づき生成されるRNA(リボ核酸)のうち、タンパク質の設計図とならないRNAの総称。

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Posted by Shigeru Kawada