スマホカメラで病的歩容を検出するAIアプリ開発 名古屋市立大学とデジタルスタンダード

スマートフォンのカメラで病的歩容を検出する無料のアプリが登場した。名古屋市立大学とデジタルスタンダード(大阪府)が共同開発したもので、特発性正常圧水頭症(iNPH)※1の診断支援ツールとしての活用が期待されている。
特発性正常圧水頭症(iNPH)由来の病的歩容を検出するアプリ
先日iOS向けのApp Storeに登場した「Gait Analyzer Insight (G-AI)」は、スマートフォンアプリの映像を解析し、特発性正常圧水頭症(iNPH)が引き起こす「すり足歩行※2」「小刻み歩行※3」「開脚歩行※4」などの病的歩容を検出するアプリだ。デジタルスタンダード社が独自に開発した、画像認識姿勢推定 AI によりリアルタイムで動作するモーションキャプチャシステムがベースとなっているという。
具体的には、頭から足先まで 24 点の 3 次元相対座標を計測し、その 3 次元相対座標を被検者の体軸に対する矢状断面、冠状断面、軸位断面へ投影した2次元相対座標に変換することで、膝関節や踵・つま先の可動域角度や軌跡の中心間距離を計測することができるとしている。
この技術を検証したところ、矢状断面投影2次元相対座標上における左右の股関節の平均可動域角度が 30 度未満であれば「すり足歩行」、左右の膝関節の平均可動域角度が 45度未満であれば「小刻み歩行」と「すり足歩行」、かかとの上がり幅が下肢長の 10%未満であれば「すり足歩行」である可能性が高いことを発見した。現状、この診断は主治医の経験に基づいた主観で評価されているため、診断の質の均てん化が期待できる。
両者は、この技術は診断だけでなく、手術効果判定、さらには手術効果予測の判定にも大きく寄与できるとしており、この技術を搭載した他製品の上市も目指していくとしている。
※1 特発性正常圧水頭症(iNPH)
idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus の略。歩行障害や認知障害、切迫性尿失禁などをもたらす疾患で、くも膜下出血や髄膜炎などに続発する二次性正常圧水頭症と異なり、先行する原因疾患はなく、緩徐に発症して徐々に進行する。
※2 すり足歩行
つま先やかかとが床面から離れないで、滑るように歩く様子。
※3 小刻み歩行
小股で歩く様子。
※ 4 開脚歩行
足を広げて歩く様子。つま先が開いていても、足の幅が開いていても良い。








