東京医科歯科大学と慶應義塾大学の研究グループは、スマートホン向けのゲームアプリを使って手根管症候群を簡便にスクリーニングする方法を開発したと発表した。機械学習の手法を用いスクリーニングのアルゴリズムも構築しており、専門医でなくともアプリ利用で重症化予防につなげられる可能性があるとしている。
感度93%、特異度69%、AUC0.86を達成
研究成果を発表したのは、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科の藤田 浩二 講師、慶應義塾大学 理工学部 杉浦 裕太 准教授の研究グループ。中高年女性に多い手根管症候群は神経伝導速度検査で正確な診断が可能だが、高価な機器と専門的な技術が必要なため十分に普及していないという。研究グループでは専門知識や技術なしでも検査できるツールとして、スマートフォンアプリを使った親指の運動解析と異常検知手法を用いた機械学習を組み合わせた手法を開発した。
具体的には、まず疾患の悪化にともない親指の動きが悪くなることに着目、その特徴を解析したうえで、親指を使ってプレイするスマートフォン用のゲームアプリを開発。ゲーム中の親指の軌跡データを取得して、機械学習で疾患の有無を推定するプログラムを作成した。このプログラムを症状のない新たな被験者15人と手根管症候群患者36人のデータに適用して推定精度を検証した結果、感度93%、特異度69%、AUC(Area Under the Curve)0.86という高い精度が得られた。整形外科の専門医が診察時に行う身体所見と同等かそれ以上の精度だという。
研究チームでは、このツールを活用すれば30秒から1分程度の簡単なゲームで遊ぶだけで手根管症候群の可能性を検査でき、自宅や保健所など専門医のいない環境でも手根管症候群の可能性をスクリーニングできるようになるとしている。今後、疾患が疑われる場合には専門医受診を促し、重症化予防へつなげるシステムの開発を目指すという。なお研究成果は2021年3月14日(米国東部夏時間)、国際科学誌「JMIR m Health and uHealth」にオンライン掲載された。