2018年6月18日、国立国際医療研究センター国際協力局のグローバルヘルス政策研究センター(iGHP)とタイ国民医療保障機構(NHSO)は、共同研究に関する包括研究協定に調印した。今後、iGHPはNHSOが持つ約4,700万人にも及ぶ医療データの分析に協力する。
国際協力として世界初の共同研究 日本は2テーマで協力
今回の包括協定に基づき、iGHPとNHSOは、NHSOが持つタイ国民の医療データを活用した研究に着手する。NHSOが持つタイ国民の医療データは約4,700万人分にも及ぶ世界的に見ても大規模なものであり、iGHPセンター長の渋谷健司氏(東京大学大学院医学研究科 国際保健政策学教授)や、研究科長の宮田裕章氏(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室教授)ら、日本での医療ビッグデータ研究の先頭を走る研究者が取り組むことになっている。
包括研究テーマは「糖尿病」「喘息」「保健財政」の3つとなっており、iGHPは主に糖尿病と喘息患者に関するビッグデータの分析、研究を担う。
「日本の高齢社会を考える上でも非常に重要なデータだ」
調印後の質疑応答では、研究チームの宮田裕章氏が今回の研究の意義について「NHSOが持つデータは、国民皆保険ということで国民のほとんどをカバーし、かつ一人一人の固有のIDでつなげて保持しているという世界的にも非常に価値の高いものだ。例えば糖尿病の経過を見るにしても、各国ではたいてい重症化した後のデータしか追えないが、NHSOのデータは治療の最初の段階から見て分析することができる。世界を見てもこうしたデータはなかなかない。病気になる前からのサポートを検討することができるという意味で、日本の高齢化を考える上でも非常に重要なデータだ」と語った。
宮田氏はさらに「高齢化は日タイ両国だけでなく世界すべての国が直面する課題。両国共同で世界に向けて新しい知見を出していくことは、課題解決を考える上で有益となる」と今後の展望を示した。