2019年5月14日、長野県伊那市がトヨタとソフトバンクの合弁会社であるMONET Technologiesと、次世代モビリティサービスに関する業務連携協定を締結した。この協定に基づき、事業の第1弾として日本初の「移動診察車」による遠隔診療の実証実験を2019年度中に実施する。
看護師がAI配車される車に同乗、車両内で医師と遠隔診療
県内で3番目に広い面積を持つ伊那市は、医師少数区域である上伊那医療圏に属しており、中山間地域における医療体制の整備、また高齢化進展にともなう、いわゆる移動難民増加への対応策も求められている。この様々な課題を解決する手段としてMaaS(Mobility as a Service)の導入を検討しており、事業モデル構築のパートナーとして、トヨタとソフトバンクが共同で設立したMONET Technologiesを選定。今後数年にわたり、共同で実証実験に取り組む。
第1弾として取り組むのは、日本初となる「移動診察車」による遠隔診療だ。トヨタ・モビリティ財団の助成金3,000万円を活用し、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業として進める。トヨタの商用車「ハイエース」に医療検査機器を搭載。看護師が同乗し患者の自宅などへ向かい、患者を招き入れ、車両内でビデオ通話により医師が遠隔地から患者を診察できるようにする。看護師は患者の血圧や脈拍測定などを医師の指示に従って行う。車両はMONETの配車プラットフォームと連携させ、効率的なルートで患者の自宅などを訪問できるようにするという。今後の法整備の状況を鑑みながら、遠隔服薬指導やドローンによる医薬品運搬も視野に入れる。
両者の協定調印式に出席した伊那市の白鳥孝市長は「地方創成は地方の私たちがやっていかないといけない。公共交通が及ばない地域をモビリティサービスによって解決したい。上伊那地域は医師不足のため、地域課題の解決に向けてモデルを確立したい」と話した。