メドメイン(福岡県福岡市)が、画像処理技術に自然言語処理を組み合わせることで、病理組織デジタル標本画像から組織学的所見を推論し文章化するAI(人工知能)の開発に成功した。従来の分類型病理AIとは全く異なるアプローチによる組織亜型の推論が可能になったことで、基礎研究の進展に大きく寄与できる可能性がある。
組織型の推論を高精度に実現
同社が今回開発したAI(人工知能)は、従前の病理組織画像の分類処理だけでなく、自然言語(組織所見)を病理組織デジタル画像に組み合わせることで、鑑別精度の向上に資するか探求する基礎研究を強力に支援するものだ。「Image to Captioning (Image-captioning)」と呼ばれる手法で、胃の内視鏡生検病理組織デジタル標本(画像)から病理組織所見(自然言語)を出力できるか研究を行ったという。
具体的には、国内の医療機関から、胃の内視鏡生検HE染色病理組織標本および該当する症例の病理組織所見(日本語)の提供を受け、デジタルスライドスキャナーでデジタル標本(WSI: Whole Slide Image)を作成。病理組織所見(日本語)は全て英語に翻訳し研究に用いた。深層学習を行うにあたっては、病理組織画像情報(Vision)については「convolutional neural networks (CNN)」、組織所見情報(Language)については「recurrent neural networks (RNN)」と、別々のアルゴリズムを用いた。
多くの派生パターンをそれぞれ3回学習し、平均値を取って計測したところ、機械翻訳の精度を測る指標である「BLEUスコア」で最高0.8前後のスコアを達成できたという。同社は、これまでは候補の中から一つを選ぶという分類型のモデルだったが、本研究で開発したモデルでは、任意の病理組織デジタル画像を入力した際、「Signet ring cell carcinoma」や「Well differentiated adenocarcinoma」といった形で組織型を分類形式ではなく直接言語情報で出力できるようになったとした。他方、文章としての推論作成については必ずしも全ての症例で完全に行うことはできなかったため、今後の課題だとしている。
論文リンク:Inference of captions from histopathological patches(Proceedings of Machine Learning Research)
今後は本研究成果をもとに、画像と自然言語の融合領域の基礎的研究を展開し、病理組織デジタル標本の解析技術を人間の思考過程に近似させていく試みを継続してまいります。
■原著論文
▼論文タイトル: Inference of captions from histopathological patches
▼日本語訳: 病理組織画像から組織所見を推論する人工知能の開発
▼Proceedings of the 5th International Conference on Medical Imaging with Deep Learning; Proceedings of Machine Learning Research, vol. 172: pp.1235-1250, 2022