認知症発症前、またはMCI期における国内最大規模、2万人のコホート成立を目指す意欲的な研究が始まった。参加者には認知能力の継続的な評価をオンラインテストで得られ、発症リスクが認められる場合は適切な治療へのガイダンスが行われる。コホートと同時に治験へのリクルートを並立して行う(トライアル・レディ)コホート(TRC)のかたちをとることで、認知症の治療薬・予防薬の早期実用化に繋げたい考えだ。
50歳-85歳対象、オンラインで参加者を募集
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻・神経病理学分野、附属病院 早期・探索開発推進室(教授 岩坪 威/いわつぼ たけし)は、参加者をオンライン上で募集する『トライアルレディコホート(J-TRC)構築研究』を2019年10月31日より開始した。
認知症の7割を占めるアルツハイマー病の新たな治療薬の開発は、治験中止が相次ぎ世界的な苦境が続いている。推進室ではこの状況を乗り越える方策として、認知症の症状はまだ無いが病理変化が始まっている「プレクリニカル期」、症状が軽度認知障害レベルにとどまっている「プロドローマル期(MCI)」にある人々に対するアプローチに着目した。
参加者は、インターネット上のホームページを介した同意の取得、基本情報登録の後、15分程度で実施可能な2種類の認知機能(記憶・思考力)テスト(認知機能指標:CFIとCogstate(コグステート))を受検。以降3ヶ月ごとにインターネット上で検査を反復し、経時的なスコアの変化等を評価する。将来的なアルツハイマー病発症のリスク上昇が疑われる方については、希望に応じ、医療研究機関に来院して行う第2段階の研究(J-TRCオンサイトスタディ)を案内する。オンサイトスタディでは、心理士が対面で行う認知機能検査や、血液・画像等の精密な検査行い、その結果により治験に関する案内も行うという。研究室では、最初の登録段階で、国内最大規模となる約2万人のボランティア参加者獲得を目指すとしている。