希少がんに対するオンライン治験を開始 国立がん研究センター

 国立がん研究センターが、希少がんを対象とした 2 つの医師主導治験でオンライン治験を開始したと発表した。これまで中央病院(東京)まで来院することが難しかった遠隔地在住の患者も、近隣の医療機関を通じて当該治験へ参加することが可能となる。

パートナー病院でICを受け、治験薬は直接配送

 国立がん研究センターは、希少がんに対する産学共同の治療開発プラットフォーム「MASTER KEYプロジェクト」で実施されている 2 つの医師主導治験において、全国の患者が居住地にいたままで、がん研中央病院(東京)が実施する治験へ参加することを可能とするオンライン診療等の体制を構築したと発表した。これまで治験への参加が困難であった遠隔地に居住している患者が、東京都の中央病院へ来院することなくオンラインで治験へ参加できるようになる。

 がん研によると、2023 年 3 月末時点で、がん研中央病院で実施中の治験数は 525 課題あるが、地方の大学病院のがん治験数は一桁であることも珍しくなく、遠隔地から中央病院で実施している治験に参加することを希望しても断念するケースも多いという。こうした治験へのアクセスの地域間差は大きな課題で、希少がんの患者団体からも強い要望が寄せられている。

 希少がんについては、中央病院が中心となり全国の 7 施設と 15 の製薬企業が参画する「MASTERKEY プロジェクト」を実施している。今回、このプロジェクトで実施されている 2 つの医師主導治験でオンライン治験を開始することで、全国の患者が地域に居ながらにして治験へ参加できる体制整備を行った。具体的には、オンライン治験へ参加したい患者は、近隣の医療機関(パートナー病院)を受診し治験へ参加する条件を満たすかどうかを検査する。条件を満たした場合、パートナー病院と中央病院をオンラインでつなぎ、パートナー病院の主治医同席のもと、中央病院の医師から患者に治験に関する説明を行い、治験参加への同意を得る。治験薬(経口薬)は、中央病院から患者さんの自宅へ直接郵送し、患者は中央病院の医師の指示のもとで内服する。治験期間中の検査はパートナー病院で行い、検査結果はパートナー病院から中央病院に共有されるという仕組みだ。

 なお「パートナー病院」は、がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院のいずれかである必要があり、現在のパートナー病院は国立病院機構四国がんセンターと島根大学医学部附属病院の 2 施設のみとなっているが、今後全国に拡大したいという。