日本病理学会は2018年11月22日に会見を行い、かねてより学会主導で開発している病理画像診断用AI(人工知能)が「実用化レベルに達した」として、今年度中に福島県と徳島県で実証実験を開始すると発表した。学会初のAIが社会実装へ向けどのような成果を出すか注目される。
感度93.3%、特異度73.5%、不一致率16.2%
会見は第64回日本病理学会秋期特別総会の会場内で行われ、直前にシンポジウムとして研究チームの関係者が講演を行い、これまでの経過と成果を報告した。
日本病理学会は、AMEDの「臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業」の一環として取り組まれている学会主導の画像診断AIの構築事業に参加している。全国の大学病院・国立病院・地域中核病院の協力を得て,病理専門医の診断の付された11万症例・17万枚の病理デジタル画像(P-WSI)を収集、そのデータベースを元に病理診断AIエンジンの開発を行う「JP-AIDプロジェクト」だ。
今回このプロジェクトの中から、胃生検データを対象とするAIの画像診断で目覚ましい成果が上がったという。996例の診断結果付きの胃生検データを使って機械学習させたところ、これまでの検証では、感度93.3%、特異度73.5%、不一致率16.2%という結果が得られ、学会では実用化レベルに達したと判断した。
今年中にも福島から実験開始、不一致率10%以下を目指す
この結果を受け、学会では、今後このAIを胃生検検査におけるダブルチェック支援システムとして、実用化に向けた実証実験を行うこととした。実践の場として、すでに稼動が進む広域ICT基板を用いた福島・徳島の地域病理診断ネットワークにこのAIを実装させる。施設間で染色試薬やスライドデータ取り込みの規格が異なると、色合いなどにデータ上の違いが生まれるが、こうした違いを吸収し精度を維持できるかも検証する。福島では12月中、徳島でも今年度中には実験を開始する予定。学会では当面、病理医とAIの判定の不一致率を1割以下にすることを目標としており、実験で得る結果は、性能評価の基礎データとして活用する考えだ。