「健康・医療戦略」ヘルスケア重視に全面改定へ、官僚のキーマンが明言

 政府の医療・ヘルスケア政策のキーマンの一人が、現在改定を進めている政府の「健康・医療戦略」第2期の内容について概要を明らかにした。新年度からは「予防」「進行抑制」「共生」をテーマに戦略を大胆に変えていくとし、この新しい戦略は海外からも求められているものだと自信を示している。

「病気にならない」「重症化させない」「隔離しない」

 見通しを示したのはここ数年、政府の政策立案に重要な立場で関わり続けている経産省商務・サービスグループ政策統括調整官 兼 内閣官房健康・医療戦略室次長の江崎禎英氏。自身が創設の旗振り役となり、2020年1月23日に5回目の開催を迎えた「ジャパンヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)2020」の総括を行う中で、政府の今後の方針について語った。

 発言によると、疾患ポートフォリオが「生活習慣病」「老化」が要因となるものに変わっているとし、それらは重症化するまでに時間があり、この時間を有効活用することが重要だという。そのために「そもそも病気にならない」「なっても重症化させない」「(治療過程において)社会から隔離しない」ことがキーになると提言。来年度から5カ年計画で策定される新しい健康・医療政策(案)には、実際に新しい基本方針のひとつとして「予防・進行抑制・共生型の健康・医療システムの構築」が掲げられている。

 また江崎氏は、自身が中国とインドネシアを視察した経験も踏まえ「もはや中国は高齢者の4割が生活習慣病患者。以前は日本の最新医療を見せてくれと言われたが、今はそのようなことは言われない。インドネシアも同様だ」とし、この新しい戦略は海外でも求められるものだと、産業振興策としても有望な方向転換であると示唆した。

JHeC2020、ビジネスコンテスト優勝は病児保育支援サービス

 江崎氏も出席した「ジャパンヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC2020)」はこの日5回目の開催を迎え、ビジネスコンテスト部門、アイデアコンテスト部門、それぞれ5社・個人がファイナリストとして審査員の前でプレゼンテーションを行った。

受賞後のスピーチを行う「あずかるこちゃん」運営のCI Inc.CEOの園田正樹氏

 ビジネスコンテスト部門は、病児保育施設と病児、親御さんをマッチングし支援するサービス「あずかるこちゃん」を展開するCI Inc.が優勝となった。プレゼンテーションでは、病児保育施設は増加しているが利用率が上がらない状態で、この原因は煩雑な申し込み手続きであるとし、これをスマートフォン向けアプリでマッチングさせるフロー(ビジネスモデル特許取得済)を提供することで改善すれば、母親が病児を預けられず仕事を休んだり退職することを防げるとアピールした。働き方改革を下支えするツールと訴えたことが高評価につながったようだ。江崎氏も「これは女性のためのサービスではない。(子育てを支える)男性のためのサービスでもある」と賞賛した。

アイデアコンテスト部門は「介護シェアリングサービス」が優勝

アイデアコンテスト部門を受賞したカイテク代表取締役の武藤高史氏

 昨年度から募集されているアイデアコンテスト部門では、介護シェアリングサービス「カイスケ」を運営するカイテクが受賞した。こちらも仕組みとしては「あずかるこちゃん」と同様のマッチングサービスだが、介護・医療の有資格者と施設向けのサービスで、有資格者が登録すれば、WEB上で1日・数時間単位からの介護関連の仕事を見つけ、面接不要で働くことができるという(特許出願中)。モデルとしては「Taimee」の介護版といったもので先月αサービスを開始したばかりだが、有資格者にとっては生活スタイルを変えずに資格を活かせすぐ収入が得られると好評で、施設側にもこういった手軽に就労できる手段があることで、施設や介護者との「相性」を確かめられ、離職率が下がるのではと期待されているという。

 Med IT TechではこのJHeC2020をはじめとした、2019年10月からの主な医療・ヘルスケアイベントのピッチを総覧できる企画記事を制作しており、今回のイベントのピッチを含め近日中にすべてのピッチを公開予定だ。

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