医療VR開発のジョリーグッド、米大学と共同で慢性疼痛向け認知行動療法プログラム開発へ
医療分野向けVRコンテンツの制作サービスやプラットフォームを提供するジョリーグッド(東京都)が、北米での事業展開を強化するため現地法人を設立し、ボストン大学の専門医と慢性疼痛向け認知行動療法プログラムを開発すると発表した。今年Appleが発表したデバイス「Apple Vision Pro」向けのコンテンツ開発も含むという。
ボストン大学の専門医と慢性疼痛向け認知行動療法プログラムを開発へ
同社が今回北米で開発に注力するのは、北米や世界で課題となっている慢性疼痛向けソリューションだ。アメリカでは鎮痛薬の継続的摂取によるオピオイド中毒者が1,140万人までに達し、2017年には非常事態宣言が掲げられるなどオピオイド薬物中毒死が社会問題化している。またオピオイド服用者の50%以上は慢性疼痛患者で、非薬物療法の活用が課題とされているほか、医療経済の点からみても、慢性疼痛によるアメリカの損失額はがんや心臓病などよりも高く最大6,350億ドルといわれており※1解決は喫緊の課題だ。
開発パートナーとして、ボストン大学「不安および関連障害センター」行動医学部長である心理学科・脳科学科のジョン・D・オーティス研究准教授を迎える。著書として、認知行動療法のメソッドを活用した疼痛管理に関する診療側、および患者側にも向けたマニュアルを出版しており※2、全米で広く使われているという。同社はオーティス研究准教授の知見を生かし、Apple Vision Proも含むVRデバイス向けの認知行動療法プログラムに取り組むとしている。
今回パートナーとなるオーティス研究准教授は「慢性疼痛のための認知行動療法(CBT)は、痛みに悩む日々の生活の質(QOL)向上に非常に効果的なアプローチだが、患者の数に対し治療を行う専門家の数が限られており、多くの患者は治療を受けたくてもなかなか受けられないのが現状だ。ジョリーグッドのVRを活用したアプローチは、インタラクティブでリアルな方法で誰でもどこでもCBTの体験が可能なため、来院のできない患者やベッドで寝たきりの患者もCBTを受けられる効果的な方法であると期待している」と述べている。
※1 Darrell J Gaskin 1, Patrick Richard;The economic costs of pain in the United States,J Pain 2012 Aug;13(8):715-24.Epub 2012 May 16.
※2 『Managing Chronic Pain』(Oxford University Press: Treatments that Work Series)