東京薬科大学の研究グループが光学機器メーカーと共同で、市販の1cm角キュベットを試料セルとして利用するイムノアッセイ法を開発したと発表した。生体分子を吸着できるジャングルジム形状の3Dプリント構造体とポータブル蛍光光度計を使用し、生体試料中の微量のバイオマーカーを高感度に計測できるという。この手法は検査設備が充実していない診療所や屋外などでも容易に実施できるため、高度医療を実現するための計測技術として発展が期待できるとしている。
従来のELISA法と同等の精度を達成
イムノアッセイ法はバイオマーカーを計測するための代表的な分析手法であり、日常的に検査利用される一方で、中小規模の医療施設では外部施設に委託することも多く、検査結果を取得するために数日ほど要することもある。より簡便、迅速にバイオマーカーを計測することは、感染症をはじめとした様々な疾患で長く望まれていることであり、早期発見、早期医療介入をもたらすツールとして多くの研究者が課題解決に取り組んでいる。
今回、東京薬科大学薬学部生体分析化学教室の東海林敦准教授、森岡和大助教、薬学部6年生中村好花さんの研究チームと東海光学の加藤祐史氏、熊谷直也氏との共同研究グループは、ジャングルジム構造体(図1a)とポータブル蛍光光度計FC-1 (東海光学製)(図1b)を用い、市販の1cm 角キュベットを試料セルとして利用するイムノアッセイ法を開発し、血中の炎症マーカーとして知られるC反応性タンパク(CRP)をモデルとする実証実験を行った(図2)。
機序としては、血清中のCRPをジャングルジム構造体に結合させ、そのジャングルジム構造体に酵素標識抗CRPを結合させた後、試料セル内の基質溶液に浸すと酵素反応が進行する。酵素反応で生じる物質の蛍光強度をポータブル蛍光光度計で測定することで、CRPが血清中にどのくらいの量含まれているかを明らかにできる。マイクロプレート及びプレートリーダーを用いた従来のELISA法との比較したところ、同等の感度・再現性で測定できることが分かったという。
研究グループでは、今回開発した手法は熟練したスキルが不要で単純な操作で実施でき、電池で駆動する蛍光光度計でも測定できることから「いつでもどこでもだれでもその場で」バイオマーカーを計測できるとしている。ユースケースとして居宅やクリニック、災害時の避難場所など、検査施設が充実していない場所での医療検査に役立つことが考えられるという。
論文リンク:Development of a Simple ELISA System Using a Jungle Gym Structure as an Antibody-Immobilization Substrate
和文論文(PDF):ジャングルジム型構造体を抗体固定化媒体とする簡易ELISAシステムの開発